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長嶋有の小説作法。常に「書きたくない」と思いながら…けれど自作は全部「面白い」!
2023-07-15
長嶋有の小説作法。常に「書きたくない」と思いながら…けれど自作は全部「面白い」!

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2021年に作家生活20年を迎えた長嶋有さん。北村浩子さんを聞き手に迎え、刊行作をふりかえったインタビュー(2021年6月11日収録)をお届けします。漫画と小説の違い、テキストを紡ぐ意欲の源泉、「正確に」書くこととは? 最新作「トゥデイズ」(『群像』2023年8月号掲載)とあわせてぜひお読みください。(※web転載にあたり、一部表現・表記を改めています。)
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 北村 今回、このお話をいただいて、デビュー作の「サイドカーに犬」から長嶋作品を全部読み返してみました。私、ラジオで本紹介の番組を担当していたことがあるんですが、ずっと「長嶋有は天才だ」と言ってきたんです。再読して「やっぱり!」と改めて思いました。

 長嶋 ありがとうございます。うん、そうかもね(笑)。「デビュー作は振り返るのも恥ずかしい、あの頃はまだ稚拙で、よちよち歩きだった」と言う作家さんもいるけど、僕は自分の作品に対しては全然そうは思わないんだよね。常に面白いじゃんと思う。

 北村 例えば、芥川賞を受賞した2作目の「猛スピードで母は」は、タイヤ交換の場面から始まります。何かの作業をしているときの様子が丁寧に書かれるのは、長嶋作品の特徴でもありますが、「らしさ」が既にはっきりとあらわれていますね。

 長嶋 この作品はいきなり芥川賞を取ったから書評がたくさん出て、うろんな目で見てかかるような強面の人の評も多かったんだけど、みんな、大事なところを読み落としてますよ、タイヤ交換ですよ、と言いたいよね。

 長嶋 舞台になっている北海道の公団は、冬用と夏用のタイヤを置いておくために、各戸に物置があるんです。団地はどこでも似たような造りだけど、北海道という土地柄、タイヤのためのスペースが必要だったんだろうね。

 タイヤ一個を転がしながら駐車場に運ぶ行為を書くとき、視覚的に一点のタイヤのアップから始まるわけです。で、北海道は土地があるから、駐車場がだだっ広い。高層建築にする必要がないから空も広い。何気ないようだけど、タイヤ交換を書くことで場所の様子が一気に書ける。映画的でかっこいいと思っているんですよ。誰も指をささないところをちゃんと指さしただろ、というか、2001年にこういう小説は案外なかったんじゃないかという気がする。

 北村 悲壮感を漂わせないシングルマザーの物語、という意味でも新しかったです。

 長嶋 最近、家のローンを組んで、面倒な手続きの最後の最後に、流れ作業でいろんな契約書にどんどんハンコを押していくという日があってさ。その作業の最後にやってきた生命保険会社の女性に「私ごとですが、私はシングルマザーだったので、長嶋さんの『猛スピードで母は』という小説に本当に励まされました」と言われて。

 北村 お幾つぐらいの方ですか。

 長嶋 僕よりちょっと上かな。家を買うという大きな出来事のエンディングに、報われる感じがあった。

 北村 読者の中で小説が有機的に生き続けている、という実感をもらえるのは嬉しいですよね。

 長嶋 数年前に「野性時代」で、テレビでも売れっ子の夏井いつきさんと俳句の仕事をしたとき、夏井さんも全く同じことを言ってくれたんだよ。「私がシングルマザーだったとき、『猛スピードで母は』にすごく励まされた、肯定された」と。たくさんの人の手に届く有名な賞のおかげももちろんあるんだけど、実効性のあるものがちゃんと書けたと思えるのはありがたいし、よかったと思いますね。

ソース元URL:https://news.yahoo.co.jp/articles/bf63ab4807e78eb168af5f79b563a377f73e0adb

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