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【書評】菊池寛と芥川龍之介、直木三十五の交流を描く快作:門井慶喜著『文豪、社長になる』
2023-06-05
【書評】菊池寛と芥川龍之介、直木三十五の交流を描く快作:門井慶喜著『文豪、社長になる』

滝野 雄作
日本でメディアにもっとも注目される文学賞は芥川賞と直木賞である。本書は、その生みの親、文豪にして出版文化の一翼を担う「文藝春秋」を創設した菊池寛(1888~1948)の生涯を、ユーモアあふれる筆致で活写した評伝的小説である。菊池寛を知らない、いまの若い世代にも是非読んでもらいたい。
直木賞作家である門井慶喜氏は手練れ(てだれ)である。本作では、菊池寛の人物像と当時の文壇事情を豊富なエピソードを踏まえて生き生きと描き出している。物語は芥川龍之介と直木三十五との交流を軸に進んでいくのだが、まず前半では菊池寛(ひろし・有名作家になって後、「かん」と呼ばれるようになる)が作家として世に出るまでの悪戦苦闘ぶりが面白い。

彼は香川県高松市の生まれ。「寛はけっして美男ではなかった。頭そのものが大きい上に肌の色が浅黒、目が細く、鼻が太い」、中学校では「炭団(たどん)」(炭の粉末を固めた燃料)と、あだ名をつけられていたが、成績優秀で図書館に入り浸り、片っ端から本を読みあさっていたという。

中学卒業後に上京、紆余曲折を経て第一高等学校(一高)に入学。同級生に4歳年下だった芥川龍之介がいた。26歳のとき、寛は「都落ち」して京都帝大の英文科に進み、芥川らと同人誌を発行。ともに夏目漱石の門下生となっていたが、芥川の作品は漱石の激賞を受け、新進気鋭の作家として注目を集める一方で、寛はパッとしなかった。仕方なく、糊口(ここう)をしのぐため「時事新報」紙の社会部記者をしていたものの、くすぶっていたのである。

世に出るきっかけをつくってくれたのは芥川だった。彼の口添えで寛は「新人作家の檜舞台」である「中央公論」に小説を発表することになったのだ。すでに名声高い芥川をモデルにして「無名作家の日記」という暴露物の私小説を書く。これが当たった。毎号、同誌で執筆するようになり、代表作が「恩讐の彼方に」(大正8年1月号)である。

同年2月、寛は芥川の誘いでともに大阪毎日新聞の客員となり、寛が長期連載した華族社会を舞台にしたメロドラマ的な小説「真珠夫人」が爆発的なヒット。舞台化もされ人気を博す。純文学の芥川と違って、新聞記者時代の見聞を素材にした彼の作品は、「ほかの書斎派の作家とは、どだい仕込みが違うのである。寛は自然に書くことができた」。俗なだけに大いに大衆受けし、流行作家の地位を不動のものとした。このあたり、久米正雄、直木三十五らの交流を交え、文壇事情も興味津々に描かれる。

ソース元URL:https://news.yahoo.co.jp/articles/fb4856abf62683fe56ff6bfa87207d4fbdc61cb0

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