わずか8年の作家人生で約600点の作品を残した中園孔二。最大規模の個展が開催
本展タイトルの「ソウルメイト」とは、中園が残したノートのなかに書き記していた言葉で、展覧会の軸となるキーワードでもある。「魂の伴侶のような親密な存在という意味でとらえてほしい。中園さんはつねに誰かを求め、他者を希求しながら制作のエネルギーに転換させていました。また、絵画を描くこと自体が“親密な何か”であったのではないかとも想像します」と竹崎は話す。
「ぼくが何か一つのものを見ている時、となりで一緒になって見てくれる誰かが必要なんだ」
これは、中園のノートに残された一節だが、このような中園の言葉は会場各所に掲示され、本展を見るうえでの手引きとなっている。中園が見たことや考えたことを知ること、ひいては中園と「ともに見る」かのような体験を得ることが本展のねらいだ。
「描き続けること」「ひとびと」「多層の景色」「無数の景色」「場所との約束」「イメージの源泉」「ソウルメイト、ともにあるもの」の7章で構成。迷路のような会場デザインは素直に順路を進むことを許さないが、その混乱が楽しい。
1章「描きつづけること」の章では、中園が「アートアワードトーキョー丸の内2012」で小山登美夫賞とオーディエンス賞をダブル受賞した実質的なデビュー作《Untitled》(2012)からスタート。若き中園の才能にいち早く着目したギャラリストの小山登美夫は当時、「内容にともなった技法の多彩さにある。何を描くか、そしてどう描くか。素材がどう使われるかで異なる空間が浮き上がり、モザイクのように組み合わせられた集まりから絵画が立ち現れる。その実験に果敢に取り組む姿は、すばらしい」(*1)と評価。様々なイメージが氾濫する同作はすでに中園のスタイルを予言しているかのよう。
2章「ひとびと」では、人、顔、あるいは人のようなイメージが頻出する作品にフォーカスする。「人間・非人間の境界線上にあるような謎めいた表現が多いのが特徴です。また、人の中に人があるような入れ子構造のようなスタイルもよく見られます」と竹崎。たしかに、一見ただの幾何学模様に見える衣服の模様を凝視するとそこに人の顔があることに気付いたり、ぼんやりと謎めいた人の顔イメージもあったり、人のようなものが多数描かれていることに気づく。なかには「星のカービィ」が好きだったということがわかる造形もあり、早熟な鬼才のイメージが強い中園の等身大も見え隠れするようで微笑ましい。