横浜・沖縄・中南米の子供たちがオンライン交流
午前8時、テレビ会議システムの画面に中学生の顔が次々と映し出されていった。日本側の参加者は、横浜市立南中の和太鼓部員と沖縄県東村立東中の生徒の30人あまり。中南米からは25人が参加した。
「そっちでも、日本語を使いますか」。横浜の男子生徒がこう尋ねると、パラグアイの男子生徒は「家では日本語が7割」と返答。アルゼンチンから参加した女子生徒も「うちではスペイン語。日本語はおばあちゃんと話すときくらいかな」と応じていた。
日本時間の17日午前8時は、中南米は16日午後5時から8時の時間帯。日本は冬だが、中南米は夏だ。子供たちは互いの長期休暇の過ごし方や、授業や部活動の様子などを話題に盛り上がっていた。
■コロナで往来困難
京浜工業地帯の一角である横浜には沖縄出身者も多い。この2つの地域と中南米の結びつきも強い。明治時代以降、横浜港からは多くの移民が中南米などへ海を渡った。沖縄からも大勢が中南米へと向かっている。一方、沖縄出身の日系人が帰国し、横浜に根を下ろしたケースもある。
交流会は、国際協力機構(JICA)が昭和62年度から続けている日系社会の次世代人材を育成する事業の一環として行われた。
本来は年2回、中南米などで現地の日本語学校に通う日系人の中学生に自らのルーツを知ってもらうため、約1カ月間、日本に招待し、ホームステイなどを通して日本の文化を伝える取り組みだった。しかし、コロナ禍で人の往来が困難となり、令和2年度からは一時的にオンラインでの実施に切り替えている。
JICAの委託で交流会を企画した海外日系人協会の浜口晴香さんは「訪日は日系人の生徒たちが日本語を学ぶ一つの目標となっていたが、コロナ禍で中断してしまい、学びのモチベーションが低下しつつある。今回の交流が励みになってほしい」と話す。
「日本に住んでいたら、私もこんな学校生活を送っていたのかな、と思うことができた」。交流会の終盤では、パラグアイの女子生徒(14)がこう話し、日本側に感謝を伝えた。
■「一瞬でつながれる」
南中ではこの日の早朝、和太鼓を演奏する様子を映像に収録し、交流会で披露した。和太鼓部部長で2年の尾身由良(ゆら)さん(13)は「練習もしっかりしてきたので、ベストの演奏ができた。みんなと出会えてよかった」と話していた。
南中も東中も地元の特色などを調べ、スライドにまとめて日系人生徒に紹介していた。南中の深沢光貴(こうき)教務主任は「ただ楽しいイベントにするのではなく、自分たちで調べたり、考えたりしたことを、どうすれば伝えられるのかを体験する場にしたかった」と話す。
南中では、修学旅行先でもある沖縄の東中とオンラインを使って平和学習を企画するなど交流を深めてきた。藤宮学校長は「どれだけ離れていても、オンラインを使えば一瞬でつながれる。10年前には想像もできなかった学びが実現できる」と語った。(玉崎栄次)