クラフトの地、沖縄で見つけた注目の工芸とその作家たち【沖縄シティガイド】
〈Luft〉は真喜志奈美、桶田千夏子によるデザイン事務所。沖縄の作家や工房とのものづくりを進め、2020年には那覇市内にショールーム兼、作品を展示販売する店〈Luft Shop〉をオープンさせている。
沖縄出身で染織家の母を持つ真喜が、首里織の3作家と2013年から進めているプロジェクトが「四角い布」だ。
沖縄において脈々と受け継がれる織物の歴史の中でも、首里城のお膝元で琉球王国の王族が着用する着尺や帯を製作していた首里織は格式も高く、その技法は多種多彩だ。沖縄の染織物の多くは、今も着尺や帯といった和装の世界では活かされてはいるが、首里織のような手織りの布を身につける機会が誰しもにあるわけではない。
「四角い布」は、そんな首里織の手織りの布の持つ手触りの心地よさ、美しさを日常で感じてもらうためのプロジェクトである。細い綿糸で織られた布は、45cm角もしくは30cm角で、糸を染める場合は沖縄の植物を使うことをルールとする。ヨモギやフクギなどで染めた糸で織られたハンカチは、光と調和する美しい色合いで、緯(よこ)糸の入れ方次第で、手織りならではのバリエーションが生まれる。
「織り手が1本の糸から布という立体を想像し、ひとつひとつの工程を進行する、その緻密な創造力。そして、そうして織り上がった布が、それでいて平面のようにさり気ない。その有り様に、沖縄の歴史や文化、自然の息吹が感じられるように思うのです」(真喜志)
木地師の渡慶次弘幸が主宰する〈中山木工〉は、塗師の渡慶次愛とのユニット〈木漆工とけし〉において漆器を製作する中で、漆器の木地としては不向きな、堅すぎたり、脂分が多い材や、漆を塗らずともそのままで木目や色味が美しい材を活かす取り組みだ。
「沖縄の木材のことをよくご存知で、成形から仕上げまで、その特性をいかしたものづくりをされています。職人的感覚と作家的感性、その両方を持っているところが渡慶次さんの魅力です。鉋(かんな)で仕上げられた木の手触り、美しさからもそれが伝わってきます」(桶田)