なぜ「ベーカリー」が「和菓子店」に?“知って欲しい教科書の今”を映画化
【映画『教育と愛国』より 映画ナレーション・井浦新さん】
「パン屋の業界に衝撃が走ったのは2017年3月のことだった。小学校の道徳の教科書、国の教科書検定を受ける前にあったパン屋の場面が、検定の後、すっかり消えてなくなってしまったのだ。その教材は『男の子が友達の家のパン屋で焼きたてのパンを買い、自分の町に愛着を持つようになる』という読み物。ところが検定の後、パンが和菓子屋のまんじゅうに変わっていた」
(全日本パン協同組合連合会 西川隆雄会長)
「素直に『なぜ?』と思いましたね。パン屋がだめで和菓子屋さん。失礼ですけど、安易にあのように変えられて、最終的にあれでいいわということになると、パン屋は愛国心がないとかね」
ベーカリーがNGになったわけ。それは教科書検定で「伝統の尊重と国や郷土を愛する態度に照らして不適切」という意見がついたからでした。
(教科書出版社の編集者 吉田典裕さん)
「直接『こういうふうに直せ』とは言わないということなんです。『ここが違うから何とかしろ』と。実際は圧力がかかっているんだけれども、直した責任は教科書会社にあるというそういう制度なんです」
今回の映画の監督を務めたMBSの斉加尚代ディレクター。この問題をきっかけに取材を続け、「教科書が今おかしいことになっている」と気づきました。
(映画『教育と愛国』監督 斉加尚代MBSディレクター)
「私が子どもの頃、『なんで世の中こうなっているの』と聞いたときに、『教科書を見とき』というふうに母親からよく言われて。『あっ教科書には書いてあるんや』と思っていたんですけれども。教科書には正しいことがきちんと書いてあると本当に言って大丈夫なんだろうかと不安になるような状況が今生まれている。そのことに子育てしている親御さんたちに気づいてほしいと思っています」
【映画『教育と愛国』より 映画ナレーション・井浦新さん】
「教科書をめぐる国と執筆側のせめぎあい。これらは道徳にとどまらない。歴史教育ではさらに激しさを増し、経済が陰りをみせる2000年代に入って以降、露わになってきた」
「戦争の反省から生まれた戦後の教育が今逆戻りしている」と監督の斉加ディレクターは感じています。
(映画『教育と愛国』監督 斉加尚代MBSディレクター)
「戦後の教育の理念というのは、世界の平和の実現のために教育の力を待つべきものであると。教育は子どもたちのために、未来の平和のためにあるんだという、そういう理念が揺さぶられている」
映画「教育と愛国」は、歴史を正しく学ぶことの大切さを描きながら、政治が教育に介入する先にどんな未来が待っているのかを問いかけます。