第168回芥川賞・直木賞に4氏決まる
芥川賞の井戸川さんは昭和62年、兵庫県生まれ。高校教師の傍ら創作を始め、詩集「する、されるユートピア」で中原中也賞。小説「ここはとても速い川」で野間文芸新人賞を受けた。芥川賞候補は初めて。受賞作はショッピングセンターの喪服売り場で働く女性と店で時間をつぶす少女らとの心のまじわりを描く。
佐藤さんは57年、仙台市生まれ。丸善仙台アエル店勤務。「蛇沼」で新潮新人賞を受賞しデビュー。芥川賞候補は初めて。受賞作は、東日本大震災で仕事道具や妻を失った植木職人が懸命に生活を立て直そうとするさまを描いた。
芥川賞選考委員の堀江敏幸さんは井戸川作品について「平凡さを輝かせる呼吸がすばらしく、言葉の一つ一つが粒だっている」、佐藤作品については「震災後の世界を、リアリズムの手法でまっすぐに正面からてらいなく描いている」と評した。
直木賞の小川さんは61年、千葉県生まれ。「ユートロニカのこちら側」でハヤカワSFコンテスト大賞を受賞しデビュー。「ゲームの王国」で山本周五郎賞などを受賞。直木賞候補は2回目。受賞作は、日露戦争前夜から第二次世界大戦までの歴史を参照し、満洲にある架空の炭鉱都市の半世紀を描いた群像劇。
千早さんは54年、北海道生まれ。小説すばる新人賞受賞の「魚神(いおがみ)」でデビュー。「透明な夜の香り」で渡辺淳一文学賞受賞。直木賞候補は3回目。受賞作は、戦国末期から江戸初期の石見(いわみ)銀山を舞台に、間歩(まぶ)(坑道)で働き、銀掘(かねほり)の妻になった女性の一代記。
直木賞選考委員の宮部みゆきさんは小川作品について「壮大な話で、小説が持つすべての魅力が内包されている」と絶賛。千早作品については「舞台は大変狭いが、腰の据わった文章で描写の一つ一つが考え抜かれている」と述べた。
贈呈式は2月下旬、都内で開かれる。賞金は各100万円。