MoFF、「100年先に残るもの」をエシカル商品のつくり手が議論
「作り手×エシカル部門」のトークセッションでは9人が登壇。モデレーターはユニティ創業者でニットデザイナーの伴真太郎氏、鍋島虎仙窯番頭兼絵師の川副隆彦氏が務めた。
冒頭、川副氏は「100年先」がテーマとなったいきさつについて明かす。「100年先を見据えるって言葉も色々ありますが、その100年先をどう想像して、定義して進められているのか」という問いを「tells market」を主催するFreewill(東京・港)に投げかけたのが始まりだった。サービスマネージャーの竹内大冴氏は「その時答えられなかった問いだが、考えなければならないものだと感じました」と振り返る。
まず議論されたのは「100年先」という期間の問題だ。
一般財団法人の「森から海へ」代表理事の渡邊智恵子氏は2017年に立ち上げた一般財団法人「22世紀に残すもの」という名の由来に触れる。「ネイティブインディアンに7世代後のことを考える、『セブンスジェネレーション』という言葉がある。ただ7世代後だと時間軸が長い。そこで発想したのが、78年後の22世紀に残すもの、残しておきたいものとなった」と明かす。
一方で課題もある。川副氏は「ものづくりの産地は地域経済や産業全体が衰退していて、100年先のことが議論にならない。暮らすためのものづくりがまずあります。目先の売上や支払いが優先される中で、100年先を話すのは非常にハードです」と話した。
鹿革製品の開発・販売を行うディアベリー(横浜)代表の渡邊洋平氏は「100年先を考えるのはハードルが高い」と前置きして、「現実的に考えられる幅で考えていくことが重要では」と投げかける。「その時、若い人が有利で、20歳の人なら50年後も生きている。そういう人が50年後を現実的に考えていくことができて、プランを落とし込むことができるのでは」と指摘する。
楽しさを出発点とする重要性も指摘が挙がった。
規格外野菜を絵の具に活用するラピスプライベート(京都)代表の山内瑠華氏は「フードロスが削減できるからではなく、子どもたちが野菜のにおいがして楽しい、面白いというところから入っていった。100年先、200年先を考えるのももちろん大事だが、まずは楽しい・面白いから入って自分事として捉えていけるかが重要では」と話す。
ヴィーガンファッションを展開するラヴィストーキョー(東京・目黒)代表の唐沢海斗氏はユーザーの「もやもや感」に寄り添うことを目指す。
フィロソフィに「ポジティブな罪悪感5ヶ条」を定める。「ユーザーさんからの声で頂いた『こういうところに罪悪感を感じています』というものから出来上がりました。ユーザー自身が抱える課題に寄り添ったブランドにしていきたかった」と紹介する。
川副氏は「100年後の未来を考えても答えはない。それでもそこの問いを投げていくことで解像度があがり、幅広い世代が考える『100年先』が出てきて、議論の土台ができてくるのではないか」と指摘した。