これが鉄道大好き学芸員の本気か 「鉄道開業150周年」に合わせて全国16カ所の施設を巡った同人誌レポートが愛の塊

『鉄ヲタ学芸員と巡る鉄道開業150周年記念展示』B5 40ページ 表紙カラー・本文モノクロ
著者:ぴんぐーたん
ご本では博物館や美術館、公文書館、郷土歴史館も……とさまざまな施設が登場します。大きく紹介されている16施設のうち、鉄道開業150周年関連の展示を行った15カ所と、常設展示1カ所が掲載されています。
所在地、アクセス、入館料といった利用のための基本的な情報と、展示の内容、施設を利用した感想などが文章でつづられています。本文はモノクロですが、各施設に1枚は大きめで見やすい写真が必ず添えられているので現地のイメージがつかみやすく、画面もすっきりレイアウトされており、読みやすいのもうれしいところです。対象の展示会名と開催された期間もちゃんと記されているなど、細かい部分も行き届いています。
このご本の作者さんは鉄道ファンであり、お仕事として学芸員をされている身だそうです。お勤め先の分野は記されていませんが、文章からは博物館や美術館に関わる学芸員の目線がひしひしと伝わってきます。
例えば、施設の中で展示スペースがどの程度の大きさを占めているかといったところから、グッズの中で目を引いたもの、図録の手にしやすさ、展示品に複製品を利用するかどうか……など、展示を作る側の視点が大いに生かされているように感じます。また、災害によって被災した資料や、資料保存をする人材育成についても触れられており、展示の裏方に居る人の理解がきらりと光ります。
そして、そこに加わるのが鉄道オタクでいらっしゃるという知見です。一口に、鉄道開業150周年関連展示といっても、各施設の展示の切り口は実にさまざまです。そこを作者さんは展示の対象になった時代背景や環境を含めてコンパクトに展示内容をまとめていらっしゃるんです。見聞きした展示を短く文章まとめるって、なかなかに難問だと思うのですが、お好きな分野の知識を存分に生かして丁寧に、それでいて決して長くなりすぎず紹介されていることで、読みやすさと信頼感が生まれています。