建築家ジョン・ポーソンが語る、日本での初個展|土田貴宏の東京デザインジャーナル
1996年に書籍『Minimum』を発表した頃から、ミニマリズム建築を代表する存在として知られてきたジョン・ポーソン。イギリス出身の彼は、20代に日本に滞在してデザイナーの倉俣史朗と出会った後、イギリスに戻って本格的に建築家として活動してきた。2018年には東京・表参道の〈ジル サンダー〉の旗艦店のインテリアを手がけ、国内での人気も高い。そんな彼の個展が原宿キャットストリート沿いのギャラリー〈The Mass〉で開催されている。展示の中心になっているのはポーソン自身が撮影した写真。写真に目覚めたのは最初の来日時だったが、建築の仕事をするようになってからは、目にしたものをスケッチする代わりに撮るようになったという。
「私はいつも何かを見ていて、見たものを撮っています。見ていることを自覚したいし、見逃したくない。写真によってその一瞬をキャプチャーするのです。誰もが同じようにものを見ているようで、写真になると違う見方をしているのだとわかります」
今回、展示された写真の中には、京都で見かけた破れた障子や、ロンドンでの通勤中にいつも目にするタイルの壁の割れた様子などもある。どちらも彼が特に気に入っている写真だ。人によっては見過ごすに違いない景色が、ポーソンにとっては特別な光景なのだ。撮影にはカメラを使うこともあるが、iPhoneを使うことがいちばん多い。iPhoneなら撮ることを周囲の誰も気にしないのがいいという。わずかでも周囲の雰囲気を乱すことを好まないらしい。
「妻のキャサリンと一緒に歩いている時、写真を撮りたいと思ってカメラを構えても、彼女はひとりで先に行ってしまう。写真集が出て、展覧会もできて、最近は許してくれるようになりましたが」