一人一匹で舞い踊る伝統芸能「三匹獅子舞」が興味深い 千葉県の獅子舞にクローズアップした同人誌『鳥見の獅子』
『鳥見の獅子』A5 16ページ 表紙カラー・本文モノクロ
著者:御堂道隆筑波
このご本は、千葉県印西市の平岡地域に伝わる「鳥見神社(とみじんじゃ)」の獅子舞に着目し、その成り立ちや楽曲、舞の解説を作者さんが個人でまとめられたものです。
獅子舞というと、お正月に見掛ける、赤いお顔にくるくるとした模様がついた緑色の胴体のお姿を思い浮かべますが、こちらの神社の獅子舞は、一人で一匹を担当し、おなかに太鼓をつけて、三匹で舞うスタイルとのこと。すらっとしたスタイリッシュ獅子舞さんだ……!
ご本では、3匹それぞれの役割の解説や呼び名がイラストを交えて描かれます。老いた雄獅子は白髪交じり、雌獅子はツノがなくて、若雄獅子はツノが真っすぐで衣装もさわやかな水色や明るい緑なんですって。役割設定とビジュアルがちゃんと連動していて、キャラ立ちがこんなにはっきりしているものなんですか!
その姿で舞う様子にも、勇ましさを誇示したり、疲れて眠ったり、ミミズを拾って食べたり……さまざまな意味とストーリーがこめられているのが、項目をたてて分かりやすく紹介されます。
この紹介が、ひとつひとつ大きな文字で短めにまとめられており、舞のはじまりから終わりまで理解しやすいやわらかな言葉でまとめられているので、文章が多めのページ構成でも気負いなく伝統の世界に入っていけます。
伝統的なお祭りの様子も、入場のためのメロディーから、各獅子のソロパート、そして戦う場面の前にはプロレスのリングコールみたいに呼ばれて登場! なんて、そう言われたら目に浮かぶようで、楽しくなってきます。
こちらのご本は「ここにいるぞ! 三匹獅子舞こんなにすごいのが!」という気持ちで作られたのだそうです。きっかけはTwitterで、「三匹獅子舞の関係者は本当にシャイでレアキャラ」と言葉をかけられたこと。みんながシャイなら自分が、と奮起して、好きなものでつながった界隈(かいわい)の話題から行動を起こすって、なんて上昇スパイラルなのでしょうか。ひとつの貴重な地方の記録であると同時に、大好きなものの良さをもっとたくさんの人に知ってもらいたいという気持ちが、本という形にまで作り上げられた、熱いファンレターでもあると感じました。
こちらの神社の獅子舞は毎年5月上旬に開催されているそうで、ご本を読むとぜひ見てみたくなります。一方で、自分の身近な地域にはどんな伝統やお祭りがあるのかな、そこにはどんな意味があるのかな、と興味もわいてきました。春祭りもあちこちで開催の季節を迎えますね。行ってみたいところ、そこにどんな楽しみがあるのか……ご本を読みながら、もっと調べて、知りたくなりました。