家と煙が表すものは…アートでウクライナ反戦訴え 東京外大で美術展
発案者は神奈川県在住でウクライナ出身の写真家、レーナ・アフラーモワさん(46)。「戦争が家にどのような影響を与えるか」という問題意識を持ち、同大側に企画を打診した。交流のある芸術家らに声をかけたところ、ウクライナからはキーウ(キエフ)を拠点とする画家と、同国中部に住む大学1年生が出展してくれることに。
一方、ロシア出身の2人は、神戸市在住の華道家、イリヤ・バイビコーフさん(50)と、モスクワ在住の画家。バイビコーフさんは「ロシア軍がウクライナにしていることは、現在の世界にはあってはならないこと」と参加した。
このほか東京芸術大大学院に在籍するベラルーシ出身の画家と、日本人写真家でジャーナリストの小原一真さん(36)も賛同した。
テーマに掲げた「ドム」はロシア語の「家」。ウクライナで破壊された建物や大切な家族を指している。また「ディム」はロシア語の「煙」。ウクライナで破壊のたびにのぼる実際の煙と、ロシアで行われているというプロパガンダの意味を込めた。
作品は約50点。ロシア侵攻後に制作された「煙」を描いた絵画や、攻撃を受けて荒廃した建物の写真にかつての人々の生活のイラストを重ねた作品、ウクライナの国旗の色のコウノトリをモチーフにした絵――など。ウクライナやロシアにとどまって参加する作家の作品は、事務局がデータで受け取り、印刷したものを展示している。
美術展を主催した東京外大総合文化研究所の沼野恭子所長は「アーティストのメッセージをくみ取り、自分の身に引き寄せて戦争と惨劇について考えることが重要で、この展覧会がそうした作用を持つことを願っています」と話している。
6月16日まで(日曜と6月2日は休場)。入場無料。会場は同大付属図書館2階(最寄り駅・西武多摩川線多磨駅)。時間は月~金曜=午前9時~午後5時、土曜=午後1~5時。【遠藤和行】