日本が誇るアニメは国宝にならない!?「150年後の国宝展」が伝えるファンタジーの国・日本の強さ
本展はトーハク創立150年を記念して開催された、特別展『国宝 東京国立博物館のすべて』と同時期開催の展示であり、その名の通り現存する国宝ではなく「150年後の国宝候補」を展示する企画として注目を集めている。またトーハク史上初の公募型展覧会としても話題となった。
個人や企業から集められた“国宝候補”は、「手塚治虫作品」や「ファミリーコンピュータ」「ゴジラ」などの国民的・歴史的コンテンツもあれば、「努力の足跡 英単語帳」、「おばあちゃんの白いハヤシライスのレシピ」といった極めて個人的なものまでが展示されている。
「国宝」とは一体なんなのだろう。なぜレシピや英単語帳すらも国宝たりうるのか。現存する国宝の保護や管理も重要だが、同時に「未来の国宝」についても同じ熱量で目を向けるべきではないだろうか。
同展の企画を担当した、東京国立博物館の学芸研究部調査研究課 課長であり、日本絵画の専門家でもある松嶋雅人氏に話を聞いた。
―― 本展はトーハク創立150周年を記念する展示として、特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」と同時期に開催された企画展ですね。どのような経緯で始まったのでしょうか?
松嶋:トーハクが150周年を迎えるにあたって、なにか新しい試みや、チャレンジングな展示やイベントができないか、ということを考えていました。そもそも博物館は何百年も前のもの、つまりある意味では「定まった価値観」を紹介する場所だと言えます。だから、「空想」とか「創造」といった類の体験や知見は基本的にお渡しできない場所なんですよね。
―― 博物館には「価値があるとされるもの」を確認しに行くようなイメージがあります。
松嶋:そういったものを中心に取り扱う施設でチャレンジングな試みというとなかなか難しいわけですが、今回一緒に企画を考えた方々と意見を交わす中で、ある人が国宝の一覧を見てこう言うんですよね。「国宝として扱われているような文化財って、現代でいうとどんなものなんですかね。だってこの舟橋蒔絵硯箱って、筆箱ですよね」って。それが作られた背景こそ違えど言っていることは至極真っ当ですし、そういった共通点は古美術への関心の入口になりそうだなと思いました。