柔らかい写真が内包する、力強い思い。写真家・川内倫子インタビュー。
柔らかい光をはらんだ淡い色調で、人間や動物をはじめ、あらゆる生命のもつ神秘や輝き、儚さ、力強さを一貫して撮り続ける写真家、川内倫子。2001年に発表した写真集『うたたね』『花火』(リトルモア)で木村伊兵衛写真賞を受賞して以降、写真集の刊行や展覧会の開催などの活動で国内外から高く評価される。本展は川内がこれまで発表したシリーズ、そして地球との繋がりをテーマとする新作シリーズ〈M/E〉を展示するものだ。身の回りの家族から火山や氷河といった壮大な自然まで、対象の大小問わずに向けられる川内の等しく強い眼差しが本展を貫く。
会場入り口の壁面下部に慎ましく展示される《Halo》は、溶けた鉄を叩いて火花を起こす中国の祭りの一場面を切り取った映像作品。そこから続くのは、新作《M/E》の萌芽ともいえる視点を取り入れた《4%》だ。これはロサンゼルスのアーティストインレジデンスでコミッションワークとして制作されたシリーズで、宇宙をイメージさせる被写体が多く登場するほか、人工物と自然物、マクロ的なイメージとミクロ的なイメージといった対照的な視点を往来する川内の視点が見られる。さらにモノクロームの写真1点と同じイメージを転写した布で構成された空間に、川内の写真絵本『はじまりのひ』を朗読した音声が流れる《One surface》へと繋がる。展示冒頭から、彼女の幅広い表現と興味に引き込まれることだろう。
川内は1997年に公募展「ひとつぼ展」でグランプリを受賞し、写真家として本格的な活動を始める。これを起点として活動期間を数えると、作家として25年のキャリアをもつ。今展において川内は「これまでの作品をすべて見せるとレトロスペクティブになってしまうし、年齢的にもそれをやるのは違うように感じました。やはり、いまの私が感じていることを中心にしたいと考えたんです」という。
ただし新作をメインに据えながら、2012年に〈東京都写真美術館〉で開催された個展『照度 あめつち 影を見る』以降の作品も包括しようと考えを広げたと振り返る。