石川直樹がコロナ禍を経て新たに挑んだネパールの8000メートル峰。新作の写真展が開催。
2022年、石川直樹はネパールやパキスタンにまたがるヒマラヤ地域の、6つの8000メートル峰に遠征した。4月にダウラギリ(8167m)、5月にカンチェンジュンガ(8586m)、7月にK2(8611m)+ブロードピーク(8051m)、8月にナンガパルバット(8126m)、そして9月にマナスル(8163m)。雪崩で撤退を余儀なくされたナンガパルバットを除く5つの山の登頂に成功し、10月に帰国。
今回の写真展では、その遠征で石川が「命懸けでもぎとってきた」写真群の中から、カンチェンジュンガ、ダウラギリ、マナスルの3つの山で撮影された写真が展示されている。
身体をぎりぎりまで酷使しながら8000メートル峰に連続して登ることで「生きている実感などという生半可な言葉ではあらわせないほどの強い手応えが毎日一滴ずつ滴り落ちて、自分の中に染み込む。 そして、身体が日々刷新されていくような不思議な感覚がある」と石川。
そもそも、標高が8,000メートルを超える山は、8,848メートルのエベレストを頂点に、この地球上に14座しかなく、「神々が住まう処」とも言われている。その厳しい8000メートル峰に立て続けに登ること自体、驚異的であり、そのなかでの、ネガフィルムを装填した古い中判カメラでの撮影。極限の状況下で切り取られた山々の荘厳さ、圧倒的な迫力や美しさに改めて驚かされる。
本展に合わせて刊行された最新の写真集は、2022年の遠征で登頂した山のひとつ、カンチェンジュンガの記録だ。ヒマラヤ山脈の東、世界第3位の高さを誇る難峰で、山麓の街であるダージリンから山頂に至る過程で撮影された写真が収められている。ダージリンの日常にも多くページが割かれており、彼の地の「今」に触れることができる。