「勝負に絶対はない」…竜王戦第5局に勝って有言実行の広瀬章人八段、藤井聡太竜王に初の第6局を見せる[指す将が行く]
第5局は相掛かりの戦型となった。初日から広瀬八段は周到な事前研究を披露し、両にらみの自陣角▲5七角から右辺を攻め込んでいく。それに対し、藤井竜王の△3三桂(第1図)が検討陣をうならせた柔軟な受け方だった。ここで広瀬八段は1時間20分の長考の末、封じ手とした。
もしや、△3三桂を見落としたか。広瀬八段に尋ねると、「△3三桂はチラッと考えていましたが、有力な手なのかすぐに判断できず、軽視した感じです。本局はそれなりにさえていたようで、軽視したのは△3三桂くらいでした。他の藤井竜王の手は全て読みの範囲に入っていました」と話した。封じ手前の長考は、先の変化を深く読んだのと、時間調整の意味合いがあったようだ。
2日目の午後は、反撃に出た藤井竜王が攻め、広瀬八段が受けに回る展開だった。藤井竜王の端角△1四角(第2図)に対し、1時間40分の大長考の末、広瀬八段は素朴に▲3五飛と逃げた。▲4三とや▲6九玉なども見えるところだが、「じっくり比較して、▲3五飛が最も手厚く指せると思いました。自分にしては、いい判断ができたと思います」と局後、満足そうに振り返った。
この後、2枚の角で攻める藤井竜王に対し、4四の地点の金を▲4五金(第3図)と引いたのが味わい深い手だった。記録係の松下洸平初段は「金を引きつける手が見えていなくて。トップ棋士の読みの深さ、正確さが勉強になりました」と感想を述べている。