グラフィックデザイナー、小林一毅が考えるおもちゃの可能性。
―Casa BRUTUS2022年3月号「こどもとデザイン100」でも自宅を取材させていただきました。部屋には発表を控えた立体パズルのプロトタイプが、エンツォ・マーリや寺内定夫らが手がけた名作玩具とともに並んでいるのが印象的でした。
「じつは今回の話が始まったのは2年ほど前のことなんです。金沢のインテリアショップ〈NOW〉の梨野雅揮さんが、展示をやりませんか、と声をかけてくれたのがきっかけ。お互いに面識のあった大阪のジュエラー〈ATAKA〉の安宅洋輝さんが僕をつないでくれたので、それなら〈ATAKA〉のギャラリーも会場にして、巡回展みたいにしたいねと。東京なら、デザインの書籍と絵本が共存している〈デッサン〉を会場にしたいと僕が希望して、3都市の巡回展という形になりました」
―2年前というと、小林さんご自身にお子さんはいなかったわけですよね。
「そうですね、だから必ずしもおもちゃ展をやる、という話ではなかったんです。ただ、福井の〈ろくろ舎〉の酒井義夫さんに『絶対に一毅くんは立体に興味のあるタイプだと思う』と会うたびに言われ続けていて......。それが暗示みたいな感じで、僕も立体を作ってみたいと思っていたんです。そしたら、自分にこどもが生まれて。こどものためという気持ち半分、純粋に立体として魅力的なおもちゃを集めていたら、だんだん自分がやりたいことが見えてきたんです」
―グラフィックデザイナーが作る造形物は、プロダクトデザイナーが手がけるそれと、どう違うのでしょうか。
「やっぱりむやみに足を踏み入れるべきではないなと思っていて。機能のための形を作るのは難しいので、より感覚的に、心を充たせる形を作っていく、というのが僕のできる領域なのかなと思いました。福田繁雄のような活動の事例も調べていたので」