最古級、3世紀中頃の矢入れ「靫」の断片が滋賀・稲部遺跡から出土…古墳時代初頭の紡織技術示す
靫は箱形で筒状の武具。2019年の発掘調査で断片12点が出土し、2本の帯状の織物製品と判明した。矢筒に巻く横帯で、1本(長さ18・7センチ、幅4・5センチ)はほぼ全体が残存し、もう1本(長さ17・1センチ、幅12・2センチ)には、ひもを通す輪が付いていた。
素材は、縦糸が絹、横糸は植物繊維。現在のデニム生地などで見られる「 綾(あや) 織り」の技法が用いられ、表面には漆が塗られていた。
靫は古墳時代前期(3世紀後半~4世紀)の古墳の副葬品として知られるが、今回の靫は、年代分析で古墳時代初頭のものと判明。集落跡の導水施設の溝からガラス玉や土器とともに見つかり、有力な首長が水辺で行う 祭祀(さいし) で権威を誇示する「 威儀具(いぎぐ) 」として使ったと考えられるという。
「ほぼ同時期の 纒向(まきむく) 遺跡(奈良県桜井市)でも靫の可能性がある綾織物が出土している。交通の要衝である本州中央部の2か所で見つかっており、卑弥呼時代の対中国外交の流入品か外来技術で作られたものと推測できる」