日本音コン ピアノ部門3位、藤平実来さん「言葉の先伝えたい」
◇藤平実来さん、喜びの声
人生で初めての“トップバッター”での演奏に「緊張しました。正直、出だしからうまくいかなくて、曲の中間あたりまでちょっと引きずっちゃって」。そこから指揮者や管楽器奏者の顔などを意識して見るようにして、少しずつ緊張をほぐしていったという。「なので『賞をいただけただけでラッキーかな』と」
演目は今年5月、来日した世界的ピアニストのマルタ・アルゲリッチさんが母校のオーケストラアカデミー(オケアカ)と共演した際に弾いた曲。自身はオケアカの事前練習で代奏者を務め、そこからさらに弾き込んだという。
5歳の時、母親に手を引かれて近所のピアノ教室に通い始め、「ずっと弾いていければいいな」とぼんやり思い始めた小学5年生の時、今も師事している岡田敦子さん(現東京音大副学長)との出会いが転機となった。今年は東京音楽コンクールでも2位となり、「とりあえず国内のコンクールは一区切りにして、もうそろそろ」と世界を見据える。
「ピアノという楽器には、歌のように言葉を乗せること、具体的な何かを示すことはできないけど、その先の世界を伝えなきゃいけない」。もう一人の師と仰ぐピアニスト、東誠三さんからの助言を引き、こう続けた。「言葉の先の何か、言葉にならない心の琴線に触れるような、訴える力を持ったピアニストになりたい」