「力強い木造空間、市民の交流の場に」伊東豊雄さん、水戸市民会館をメディア公開
新しい建物が姿を現したのは、水戸駅から2キロほど続く商店街の一角。水戸のシンボルタワーのある水戸芸術館(磯崎新さん設計)に隣接し、国道50号をはさんで京成百貨店と向かい合う好立地だ。もともと水戸市民会館は別の場所にあったが、東日本大震災で被災し、耐震性の問題で移転建て替えとなった。コンペで伊東豊雄建築設計事務所の案が選ばれ、地元の横須賀満男建築設計事務所と共同で設計を担当。2年7カ月の工期を経て先月末に建物が竣工(しゅんこう)した。
市民会館は地上4階、地下2階の複合施設。2000席の大ホール、中ホールに加え、大会議室や展示室、茶会などを想定した和室も備える。特に重厚感のある大ホールは、偕楽園の梅をモチーフにした音響反射パネルがデザイン上のアクセントになっている。隣の水戸芸術館がクラシック音楽などに特化した、比較的小規模なホールであるのに対し、市民会館はコンサートや演劇、ダンス、国際会議や式典など、より多目的に使えるという。
建築の特徴は何といっても、鉄筋コンクリート造のホールを取り囲むように融合させた、木造の構造体だ。長野県産カラマツの耐火集成材を使い、やぐら状に木組みしたもので、広い吹き抜け空間は「やぐら広場」としてマルシェや物産展、パブリックビューイングなどの利用を想定している。
「木で力強い建築をつくりたかった」と伊東さん。 旧藩校「弘道館」など、水戸の歴史的建造物との連続性も考慮したという。一方で、力強さだけでなく、お年寄りが休憩したり、学生が勉強したりできるラウンジを設けるなど、市民が日常、気軽に立ち寄れる工夫も凝らした。「子供たちが学校帰りにふらっと立ち寄ってくれるといいですね。市民の交流の場になれば」
現在、建物の備品工事や道路整備などが進行中で、来年7月2日のオープンを予定している。