殿様は正月何食べた? 井伊家の年中行事史料で紹介 彦根城博物館
◇1月1日から
彦根藩では正月をはじめ節分、五節句、中元、すす払いなどの定例行事があった。その際、藩主に出された献立が江戸後期の「年中御定例御祝留(ねんちゅうごていれいおいわいとめ)」からうかがえる。冒頭で紹介されるのは元日朝の様子。まず長熨斗(ながのし)(長く伸ばしたのしあわび)、喰積(くいつみ)(三宝に盛り付けた米、のしあわび、勝栗、昆布)、高盛(たかもり)(高く盛った)三汁八菜を儀礼的に提供。その後、実際に食べる雑煮、二汁六菜が出されている。今回は井伊家14代直憲が高盛で使った「黒漆塗橘紋蒔絵膳椀類(くろうるしぬりたちばなもんまきえぜんわんるい)」が飾られる。
江戸時代の武家では、正月によろいかぶとと鏡餅を併せて飾る風習(具足飾)があった。展示では大老も務めた井伊家13代直弼の「朱漆塗紅糸威縫延腰取二枚胴具足(しゅうるしぬりべにいとおどしぬいのべこしとりにまいどうぐそく)」の周りに太刀、弓具、燭台(しょくだい)、鏡餅を載せた三宝を配置し、当時を再現する。藩の業務日誌「側役(そばやく)日記」には、1757年1月11日にあった具足飾の鏡開きの記事がある。日の出過ぎにお祝いをし、その後鏡餅や酒を家老や側近がもらったと伝えている。
藩主用の料理を記録した「御膳方(ごぜんかた)日記」(1871年)も公開する。廃藩置県直前にあった上巳(じょうし)(3月3日)祝いの献立に魚介類(タイ、ハス、イカ、地元産の松原エビ)を使ったことが分かる。ただし「5日にお祝いする」とも書かれており、3月3日が桜田門外の変で暗殺された直弼の命日にあたることから、日程を変更していたことが推測される。
会期中無休。観覧料は一般500円、小中学生250円。博物館講堂で以下のイベントもある。いずれも定員は50人で当日午後1時半から先着で受け付ける。問い合わせは同館(0749・22・6100)。
<スライドトーク>1月7日午後2時から、早川駿治学芸員がプロジェクターで展示解説。聴講無料。
<年中行事を比較する―江戸幕府・彦根藩・彦根藩士家>1月14日午後2時、早川学芸員が講演。資料代100円が必要。