松山智一による「三英傑」モチーフの大作、中日ビルに恒久設置。24年春に開業
名古屋屈指の繁華街である栄エリアの中心に位置する同ビル。その歴史は古く、中部地方最大のビルとして誕生したのは1966年のことだ。ビル内には中日劇場が入居するなど、長らく栄の文化拠点として親しまれてきた。
これをリニューアルさせた新たな中日ビルは、地下5階地上33階の高層ビル。「ザ ロイヤルパークホテル アイコニック
名古屋」や多数のショップが入居する複合施設だ。栄の新しいランドマークを目指すこのビルの2階のオフィスロビーに、ニューヨーク・ブルックリンを拠点に活躍する松山智一
のアートワークが恒久設置された。
中日ビルは、地域の人々が「楽しむ・憩う・働く・集う」ビルとして新しい時代の文化的なシンボルとなることを目指しており、「希望や夢を感じてもらえるアートワークを設置する」こととなったという。
今回の作品は、「オフィスエリアで働く方々の正面玄関である、オフィスエントランスの顔となる作品」「地域に根差し、地域の方々と一緒に独自性・歴史性を大切に語り継ぐことができる作品」「未来に向けたメッセージを発信することができる作品」をテーマにアーティストの検討がなされ、東海圏出身の松山が選ばれた。
松山は1976年岐阜県高山市生まれ。上智大学を卒業後、2002年に渡米し、ニューヨークのプラット・インスティテュートコミュニケーションデザイン学科を首席で卒業。現在はブルックリン・グリーンポイントにスタジオを構え、国際的に活躍を広げている。
松山の作品は、日本古来の伝統色や花鳥といったモチーフ、雑誌やウェブ上にあるイメージなどが複雑に同居することで知られる。ペインティングが中心だが、現在は彫刻やインスタレーションも手がけており、情報化社会のなかの様々な文化の融合をその作品で表現している。
「高山に住んでいると名古屋から大きな影響を受ける。その名古屋の中心である栄に作品が置かれるのは非常に喜ばしく、やりがいのある仕事だった」(松山)。
今回の作品タイトルは《Infinity
Trinity》とされており、あえて邦題にしないことで鑑賞者の想像をかきたてたいと、松山は期待を寄せる。作品は鏡面仕上げのステンレスで表現した三体の立体造形で構成されており、これらは尾張名古屋に縁の深い三英傑(織田信長、豊臣秀吉、徳川家康)の姿を表している。継承されてきた歴史と記憶、そのなかで進化を続けてきた人間を対比的に描き出した。
松山は「未来に継承されてほしいと思えるだけの作品ができた。街の新しい景色づくりに参加できたことがありがたく、多くの皆さんに楽しんでいただきたい。栄の新しい景色になってほしい」とのコメントを寄せている。
なお、同ビルには旧中日ビルの正面玄関ロビーの天井画として親しまれてきた矢橋六郎によるモザイク壁画《夜空の饗宴》も一部が6階、中日ホール横に移設され、当時の記憶をいまに伝えている。