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藤原定家の傑作とは? 日本を代表する歌人が選ぶ、これ以上なく上手い歌
2023-05-15
藤原定家の傑作とは? 日本を代表する歌人が選ぶ、これ以上なく上手い歌

 平安から鎌倉時代、『新古今和歌集』などを撰進し、『源氏物語』などの書写・校訂をした古典学者、藤原定家。彼自身が詠んだ歌も、優れた歌が多いことで知られる。では、そんな定家の詠んだ和歌の傑作とは何か。日本を代表する歌人・前川佐美雄が紹介する(『秀歌十二月』をもとに紹介する)。

 和歌は、古代から現代まで連綿と続く、日本を代表する文学だ。そのため、和歌を詠むときには、それ以前の作品から影響を受けたり、過去作を下敷きにしてつくったりすることも多い。それ以前に日本に伝わった中国の漢詩から着想を得ることもある。

 昔から、「春の夜」を読んだ歌は多い。いつの時代も、春になって暖かくなると、草木が生え、花が咲く情景を美しい表現で残したいと思うのかもしれない。まずは、春の夜を扱った歌を紹介して、次に定家の傑作といわれる歌を取り上げよう(以下は『秀歌十二月』より引用する)。
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大空(おほぞら)は梅(うめ)のにほひに霞(かす)みつつくもりもはてぬ春(はる)の夜(よ)の月(つき)(新古今集)藤原定家(ふじわらのさだいえ)
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 「くもりもはてぬ」は、くもりきっていない、というほどの意味であるが、これはこの歌の本歌といわれる大江千里(おおえちさと)の

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照(て)りもせず曇(くも)りもはてぬ春(はる)の夜(よ)のおぼろ月夜(つきよ)にしくものぞなき
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 がうまいぐあいに説明してくれる。これは新古今集にでているが、千里は古今集時代の人で、白楽天の嘉陵(かりょう)春夜の詩「明(めい)ならず暗(あん)ならず朧朧(ろうろう)の月」の心を詠んだものだから、定家のこの歌も千里を通じて白楽天へまでたどれるわけだ。

 しかし千里は「照りもせず曇りもはてぬ」などとながなが説明した末に「しくものぞなき」とまずい結論をつけて、古今集歌ふうの悪いくせを出したのに反し、それを踏まえたとはいえ、本歌とは似ても似つかぬ、身も心もまったく異なる、このような秀歌をなしえたのはさすが定家だ。春の朧(おぼろ)月夜の情景を詠んでこれほど完璧、これほど高尚の作は、あとにも先にもないといいたい。

 上句の大空は誇張だし、においに霞むは理に合わないと指摘するのはたやすい。が、作者はもとより承知の上だ。あえて感覚的にそういわないかぎり人々は納得しないのだ。

 だれもが経験して、だれもがよしとする梅におう朧月夜だ。誇張もやむをえないというのでなく、いかに誇張すべきかに苦心している。だからこそ「くもりもはてぬ」と思い入れをして、結句は「春の夜の月」と体言止めで余情を残した。そこで思い出されるのは蘇軾(そしょく)の詩「春夜」だ。

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春宵(しゅんしょう)一刻直(あたい)千金 花に清香有(あ)り月に陰(かげ)有(あ)り 歌管楼台声(こえ)細細(さいさい) 鞦韆(しゅうせん) 院落夜(よる)沈沈(ちんちん)
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 吟誦していると情景が目に浮かぶ。美しい春宵の情景が手に取るように見えてくる。

ソース元URL:https://news.yahoo.co.jp/articles/b19a8c465f6af1512bb4f96256ecf8c61ccb44fd

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