国宝の扉絵、透明性顔料で元の質感に 平等院鳳凰堂で修復
鳳凰堂の四方には、阿弥陀如来が人間を救う「九品来迎図(くほんらいこうず)」が描かれた。建立時の扉絵(国宝)は保存のため1967年に取り外され、京都画壇の画家らが模写した扉が設置された。一方、2017年から鳳凰堂の本格的な修復が始まり、東面の「上品下生図(じょうぼんげしょうず)」の汚れを落とした際、顔料の一部も色落ちしてしまった。
今回の新技法は、その補修を検討した東京芸大大学院の荒井経(けい)教授らが開発した。
模写時と同じ顔料を再度塗った場合、長年たつと周囲との違いが目立つ恐れがあった。そこで、透明性のある赤、黄、緑、青の顔料を組み合わせ、数十種類を調合。脱色部分に塗ったところ、下地の色が適度に透け、最初の模写時の状態に近づいた。補修しない部分との色調の差が少なく、経年変化しても全体が自然に退色し、再補修もしやすいという。
この技法は、北面の「中品上生図(ちゅうぼんじょうしょうず)」の修復にも既に活用し、今後は他図に広げる予定だ。荒井教授は「絵が“健康で自然に年を取る”ための手法。他の文化財にも応用できる」と説明。神居文彰住職は「足すのでなく、透かして色を補うという逆転の発想。大いに歓迎したい」と語った。
調査結果は平等院刊行の紀要「鳳翔学叢(ほうしょうがくそう)第18輯(しゅう)」に掲載された。