義足のアーティスト・片山真理 マネキンから本当の自分へ
「大人になってからハマった」という「ヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivienne Westwood)」のジャケットを羽織り、個展会場に現れた片山。義足にペイントされたカニは、自身が「蟹座」であり、蟹のハサミが自身の左手に似ていることから気に入っているモチーフだという。彼女はこのユニークな義足で国内外を飛び回っている。
この夏は、リトアニアで個展を開催。現在、イタリアのシューズブランド「セルジオ ロッシ(Sergio Rossi)」のサポートを受けた「ハイヒール・プロジェクト」も進行中だ。デザインチームや義肢装具士と相談しながら作り上げた、義足用ハイヒールを披露する日も近いという。身体と装い、そしてアートが密接に関わりあい、彼女にしか表現できない世界がさらに広がろうとしている。
「絵を描いていた高校生の頃から、イラストの中に私に似せたキャラクターを登場させていました。何かを表現する時に等身大の自分をその中に据えると伝えやすく、自然とそういう絵になっていったんだと思います」。後に「セルフポートレイト」として評価を得た写真作品についても、元々は手縫いのオブジェを自室で撮影するために、自身の身体を「マネキン」として利用したものだったという。やがて、主役ではなかったはずの彼女のアイコニックなスタイルが世間から注目されるようになっていった。
片山のイメージといえば、黒髪ボブに切れ長のアイメイク、そして真っ赤な口紅。これは彼女が大学院生の頃、ジャズバーで歌う仕事をしていた時に「必要にかられて」作り上げたスタイルだったという。義足も隠していた当時の片山は「毎日ロングドレスを着てウィッグも被って、すごくビクビクしながら歌っていたんです。その化粧や装いは、ある意味、外に向けられた武器。自分を守る手段でもあったし、外へ出ていく手段でもありました」と振り返る。