現代アートシーン発信へ 3日から「アートウィーク東京」
世界のカレンダーに「東京」を
「世界を見渡すと、ビエンナーレなどの国際展、(売買が主目的の)アートフェアと、現代アートに出会うさまざまな機会がある。この時期は『アート・バーゼル香港』、この期間は『フリーズ・ロンドン』…という風に、世界各地のコレクターおよび美術関係者は主にアートフェアに合わせてその都市に集まる。でも東京にはこうした人々が集中して行くべきタイミングがなかなかない。アートウィーク東京ができることで、〝世界のカレンダー〟に『東京』を根付かせるのが重要ではないか」。10月末に行われたAWTの記者発表会で、片岡真実・森美術館館長はこう訴えた。
例えばロンドン発祥の世界有数のアートフェア「フリーズ」はロンドン、ニューヨーク、ロサンゼルスに次ぐ4番目の拠点にソウルを選んだ。今年9月には第1回の「フリーズ・ソウル」が開催されたが、「欧米の主要ギャラリーが新しいスペースを(ソウルに)オープンさせるなど、周りも含めて活性化している。美術館も年間の一押しプログラムをその期間にぶつけてモメンタム(勢い)をつくる。そういう意味で、東京もまだまだやれることはあるなと思う」。
AWTはアートフェアではなく、あくまでアートイベントだが、今年から提携するアートバーゼルのディレクター・アジアのアデリン・ウーイさんは「アートウィーク東京のようなプラットフォームがあることで、日本の発展の可能性に注目できる」と歓迎し、「世界中から100人余りのゲストを東京に迎え入れる予定」と明かした。
無料シャトルバスも運行
AWTの主催は、東京・東麻布のギャラリー「Take Ninagawa」の蜷川敦子代表らが共同設立した一般社団法人「コンテンポラリーアートプラットフォーム」で、蜷川代表がAWTのディレクターを務める。今年は東京都現代美術館や森美術館、資生堂ギャラリーなど10の美術館・機関と、現代アートを扱う41の商業ギャラリーが参加する。
都内に散らばる計51の参加施設をつなぐのは、無料のシャトルバスだ(約15分間隔で運行予定)。美術館の多い六本木エリア、老舗ギャラリーがひしめく銀座エリア、新進ギャラリーやアーティストの発信拠点が点在する池袋エリアなど6ルート用意され、途中で別ルートに乗り換えもできる。乗車には無料の公式アプリ「AWT PASS」の取得が必要。バス運行は文化庁の助成のもと、東京都などが主催。まさに官民あげてアートシーンを盛り上げる企画だ。
日本の「今」を伝える
もっとも、「参加施設の展覧会が最も重要なコンテンツ」と蜷川ディレクター。AWTに合わせたわけではないだろうが、この秋は日本の現代美術をリードしてきた重要作家の展覧会が目立つ。国立新美術館(六本木)では「もの派」の重鎮の李禹煥の個展、国立近代美術館(竹橋)では大竹伸朗の個展が、それぞれ話題に。またギャラリーに目をむけると、世界的巨匠の杉本博司(ギャラリー小柳、銀座)、光と音のインスタレーションで知られる池田亮司(TARO NASU、六本木)、身近なものを用いて目に見えないエネルギーを可視化する毛利悠子(Yutaka Kikutake Gallery、六本木)らが新作などを披露。日本のアートの「今」を伝える。
記者発表会ではAWTアンバサダーに就任した俳優の鈴木京香さんも登場。「私にとってアートは表現する際のヒントにもなる、インスピレーションの源。アートウィーク東京をきっかけに大好きな東京の街が現代アートで盛り上がってほしい」と呼びかけた。
41のギャラリーと銀座メゾンエルメス フォーラム、資生堂ギャラリーは入場無料。美術館8館は公式アプリ「AWT PASS」で割引価格適用。詳細は公式ウェブサイトなどで確認を。