不登校児らに〝バーチャル学校〟 東京都がシステム提供、新宿区が今月運用開始
■アバター操り〝登校〟
「不登校児らにとっては(現実世界での)登校は困難でも、こちらでは心理的な負担が少ない。社会や周囲との接点の一つとなってほしい」。こう話すのは、システムの開発に携わった都教委の小林正人情報企画担当課長。子供らの利用拡大に期待を寄せている。
システムの名称は「バーチャル・ラーニング・プラットフォーム」。子供らは自分を模したキャラクター(アバター)を操り、仮想空間の学校に〝登校〟する仕組みだ。例えば不登校の子供らには「学習フロア」と「共用フロア」の2つの仮想空間が用意される。
学習フロアには、机やホワイトボードが置かれた「教室」や、オンライン上にいる人たちがビデオ会議ツールやチャットを通して対話できる交流スペース、相談員などに話しかけられる相談スペースなどがある。共用フロアにはグラウンドや公園を模した設備があり、オンライン上に居る人同士で交流することなどができる。
このシステムは都教委が民間事業者と連携して開発した。「機能や利便性の向上を図り、より多くの自治体に導入してもらいたい」(担当者)としている。
■担当者ら普及に期待
導入の皮切りとなるのは新宿区だ。昨年12月~今年3月末までの事業期間で職員らが試験運用を始めており、今月16日からは実際に子供らにログインしてもらう予定だという。
同区が仮想空間に〝招待〟するのは、区教育委員会が所管する「区立教育センター」に登録されている小・中学生らだ。社会的自立のための適応指導を行う「つくし教室」の約30人と、日本語指導を受ける約40人の外国人の子供らを対象とする。
もともとセンターでは、登録されてはいるものの、心理的な負担や、教室への距離が遠いなどの問題で、センターにも通うことができない子供らのために、職員が家庭訪問や図書館などへの出張訪問を行っていた。そうした中、センターでは「子供らとつながる手段の一つに、オンラインの活用も考えていた」(区担当者)といい、都からシステム提供の話があったことが導入のきっかけとなった。
この担当者は「さまざまな事情で自宅からなかなか出られない子供がいる。まずはネットでつながることで(現実の)センターや学校にも行こうかな、と思えるきっかけになればいい」と話している。
区では、4月以降の本格運用にも参加する予定だ。(外崎晃彦)