ディーター・ラムスの往年のサウンドに身を委ねる企画展がスタート。
ディーター・ラムスは、20世紀のドイツを代表するインダストリアルデザイナーだ。1955年に、日本ではシェーバーや電動歯磨きなどでよく知られている電気器具メーカー〈Braun〉のデザイナーに就任。1997年に同社を去るまで、約40年間に渡り、500を超える名作を世に送り出してきた。
1920年代にパワーアンプやラジオ受信機を完成させた〈Braun〉は、ラジオとレコードプレイヤーの複合機を初めて世に送りだすなど、革新的な商品を数多く打ち出し、モダンなライフスタイルの礎を築いた。ラムスは、そんな〈Braun〉の一員として、機能主義に徹しながらも、いくつもの魅力的な製品を生み出してきた。美しさと機能性をあわせもつ彼の作品は、〈MoMA〉などの美術館にも収蔵されている。さらに、彼が1970年代後半に定義した、彼の哲学とも言える「良いデザインの10ヶ条」は、のちに〈アップル〉社のハードウェアにも影響を与えたとも言われている。
今回、デザインギャラリー〈LICHT〉で開催される企画展では、ラムスが1960~70年代にデザインした、〈Braun〉のオーディオにフォーカスする。当時、彼がデザインしたオーディオは、レコードプレイヤーやテープマシーンなどのアナログ機器だ。しかし、優れたデザイン性はもちろん、そこには消費社会への疑問を呈する彼の哲学が脈打ち、今なお新鮮な感動をもって対峙する者を強く惹きつける。
会期中、会場では、壁面ユニットを含めたオーディオ機器を展示販売。貴重なそのサウンドを体感できる。そのサウンド、そしてデザインは、私たちの未来への思索に何らかの気づきを与えてくれることだろう。
デザインギャラリー〈LICHT〉東京都目黒区青葉台3-18-10 2F。TEL 03 6452 5840。2022年9月3日~18日。13時~18時。火曜・水曜休。