IMA next #032 審査員 水谷太郎 テーマ「FASHION」にまつわるQ&A
Q. 今回の審査では、「FASHION」という非常にストレートなテーマを掲げることにしました。モデルが着用した洋服を見せることを目的としたいわゆる「ファッション写真」に限らず、「FASHION」を広義にとらえた作品も応募対象となっていますが、どのような作品を期待していますか?
A. ファッションには、その時代や文化、例えば音楽やアート、衣食住のすべてが関係していると考えています。時代を映す鏡としての「FASHION」という言葉は、写真の本質的な部分とつながると思います。人が写っていなくてもファッションを感じる瞬間を収めた写真もありますし、自分自身を撮ることもファッションですよね。今回のテーマは、幅広くとらえてほしいです。洋服をよりかわいく、よりかっこよく見せるために、メディアに依頼されて”仕事”として撮るものを「ファッション写真」として思い浮かべる人が多いと思いますが、ファッション写真はそれだけではありません。ファッション的な要素は、意外に身の回りに転がってるものなんです。
Q. 一般的に認識されている「ファッション写真」との、良い意味でのズレに期待したいですね。時代とともに変わり続けるファッション写真と、フォトグラファーはどのように関わっていくべきだと思いますか?
A. いろんなタイプの写真家がいるので、一概にこうあるべきとはいえないのですが、写真において重要なのは”その場”にいることだと思います。家族や友人をはじめ、身のまわりにいる人たちの感情や思考、彼らがいる場所、身につけているもの、聴いている音楽が感じられる写真が、時代を表すのではないでしょうか?
Q. 現代の「ファッション写真」とは?
A. 「ファッションフォトといえば、雑誌に掲載されているもの」という時代が長かったですが、いまは雑誌の勢いが失速し、SNSの影響力が大きくなる中で、ファッション写真を再定義しなければならないタイミングだと思います。
Q. コミッションワークとパーソナルワークをどのように区別していますか?
A. まったく区別してないです。自分が好きだと思う場所に居続け、面白いと思うものに興味を持ち続けているだけ。それがファッションのこともあれば、音楽や何かのムーブメントだったり、モノや風景ということもあります。シンプルに人に喜んでもらえる表現にすべきと考えているので。
Q. コロナ前は、海外でのロケも多かったと思います。コロナ以降、撮影における物理的な変化がファッション写真に影響を与えていると思いますか。
A. めちゃくちゃ影響がありますね。遠く離れたところまで行き、見たことのない景色を見たいという視覚的な好奇心を満たすのが難しくなってくると、やっぱり内に向くというか、身のまわりの美しさを発見することしかできなくなる。いまの日本の写真シーンは、より島国っぽくなってるかもしれないですね。自分の近くを解像度を上げて見ることで、ある種の新しい表現みたいなのも生まれていると思いますが、自分から遠いもの、外側の景色もないと、何か行き詰まっちゃうなって感じはします。
例えば、日本のユースカルチャーを見て感じるのは、自分のまわりにもすごく良いものを作っている面白い子がたくさんいますが、海外のスタンダードみたいなところからちょっと離れている。それが日本らしさではあるのですが、そこに国際的な感覚みたいなものが混ざり合っていくともっと面白くなるような気がします。特に写真や音楽は、言語の壁が比較的関係ないと思うんですよね。
Q. 今後の予定を教えてください。
A. 作品をまとめて写真集の出版と写真展を開催したいと考えています。今しか見れない時代や景色を撮り続け、好奇心を満たしていこうと思います。