京都のアート祭「KEX」がおもしろい、おすすめ無料企画はコレだ
もっとも気軽に体験できて、かつ『KEX』らしいと言えるのが、ティノ・セーガル『これはあなた』だ。「京都市京セラ美術館」(京都市左京区)の日本庭園に、セーガルから特定の指示を受けた「翻訳者(インタープリター)」を配置。庭にたたずむ翻訳者の前を通りかかると、その通行人の姿や印象を「歌」という形で翻訳してくれる・・・という仕掛けだ。
その「翻訳」の内容は、童謡から賛美歌まで多種多様(ちなみに筆者は、あるミュージカルの名曲だった)。自分がどんな翻訳をされるかというドキドキ感もあるし、しばらくほかの人の翻訳を観察して、その法則を見つけ出すのもよし。翻訳者は、容易に発見できるので、気軽に立ち寄ってみてほしい。10月10日以外は、月曜休演なのでご注意を。
また、演劇祭会場のひとつである「京都芸術センター」(京都市中京区)では、『Encounter the Spatial―空間への漂流』というタイトルで、映像作家のミーシャ・ラインカウフの2作品を展示している。
『Endogenous Error Terms(内生的エラー)』は、東京を含めた各都市の、水道管や水路から見える風景を定点観測した、1分程度の映像を集約したもの。一方の『Fiction of Non-Entry(入国禁止のフィクション)』は、陸路では越境困難な国境の海底を歩いて試みたその様子を、美しい海中の映像を中心に描いている。
どちらも環境ビデオ的に、ぼんやりと観て楽しむことも可能だが、都市のインフラの危うさとか、国境が存在する意味やその不条理さなど、さまざまな問題にも思いを馳せることができる。2本合わせても30分程度で鑑賞できるうえ、運が良ければビーズクッション付きで寝転がって観ることも可能なので、散策中の休息を兼ねていかがだろうか。