ピアニスト、イリーナ・メジューエワが「オールショパン演奏会シリーズ」をスタート!「ショパンの創作期は女性関係できれいに区切れます」
今回、オールショパンのプログラムを4回シリーズで行うことになりました。これまでのリサイタルでも、もちろんショパンの曲はいろいろ演奏してきましたが、あらためて考えてみると、ショパンだけでこれだけの量をまとめて弾いたことって意外とないことに気づきました。というか、初めてかも知れません。
それで今回は、本(講談社現代新書『ショパンの名曲』)でもやりましたけれど、作曲年代をおおまかに初期・中期・後期の三つに分け、その年代を追って演奏してみようと思っています。
ショパンの創作期を3つに分けるというのは、あんまり言われてないかも知れません。でも、私の中では何となく分かれています。
まず、初期はパリに行く前のポーランド時代。で、パリに移った後の30年代、その34年、35年からが中期。後期は40年代から。そんな感じです。
で、これって、私の勝手な想像かも知れませんが、ひょっとしたら、女性関係で区切れるんじゃないかと思うんです(笑)。けっこう、きれいに分かれてるんですね。
「初期」のお相手はコンスタンツァ・グワトコフスカ。これはショパンの片思いの愛。で、グワトコフスカが結婚するのと同時期に、ショパンはポーランドを離れます。手紙を読んでもこの時期で、がらっと人間が変わっている。
その次はヴォジンスカ。彼女とは結婚する話が進んでいましたが、何となく別れてしまいました。同じ時期にジョルジュ・サンドがあらわれて、この2人の女性との関係が中期。で、サンドと別れてからが後期。
例えばピアノ・コンチェルト1番の2楽章。好きなコンスタンツェさんのことを思いながら曲を書いたみたいなことをショパン自身が言っています。また、「別れのワルツ」という有名な曲がありますが、あの曲やOp.18のインスピレーションの源はヴォジンスカ。このように、女性との関係性から生まれた作品がいくつもあることを思うと、やっぱり影響はゼロではないと思うんです。
もっとも、愛する女性への思いを作品化するといっても、だらだら感情を垂れ流すというものではないですね。個人的な感情を音楽で表現するのだけれど、その仕方は非常にクラシカル。ショパンは形式性をとても大事にする人でしたから、パーソナルな感情を、美しい形で表わそうとしたんです。