『やんばるアートフェスティバル』で話題の展示をアーティストが徹底解説!【沖縄シティガイド】
巨大なバルーンのゴミ袋《Gold Experience》は中に入ることで、体験者自身をゴミに見立てて遊べる体験型の作品だ。2012年の〈渋谷PARCO〉での展示から、『六本木アートナイト』、〈森美術館〉と、都市の中で展示されてきた。
「消費社会を象徴するファッションビルからスタートし、都市での展示を行ってきましたが、まったく状況の違う自然に囲まれた中での展示は初めてです。311以降、黒のゴミ袋が放射性物質に汚染された物質の処理に使われるなど、時代や状況で想起させるものが変化してきました」(稲岡求)
またこの場所に展示することについて、エリイはこう話す。
「これはゴミ袋を作った人間が、その中で遊ぶという作品です。かつて子供たちが遊んでいた、海の見える体育館を設置場所にしました。いまは廃校になっています。人間がたくさんいる消費の場所から生まれたゴミ袋の作品の中に入ることによって、人間だけがいなくなったこの場所に存在している時間や歴史の激流を揺蕩(たゆた)えるかもしれません」(エリイ)
「前回から参加していますが、この体育館でかつて使われていた机と椅子に腰掛けて海を眺めていると、昨年より建物に息吹を感じます。フェスティバルが継続的に行われていることで、人の流れがあって空気が入れ替わっているのでしょう。この体育館もステンドグラスの光がキラキラしていて、窓からの海も美しくて贅沢な空間です。こういう活動によって、朽ちていくのを遅らせていくことで、この体育館との出会いがある」(エリイ)
国内の芸術祭にはほぼ参加したことがないという〈Chim↑Pom from Smappa!Group〉だが、きっかけはメンバー林靖高だった。
「僕は安室奈美恵ちゃんと同学年なんですが、それきっかけで沖縄の事は昔から興味がありました。ポップスターまで成りあがる強い意志を生むような、東京育ちの僕には想像できない磁場が沖縄にはあるので。昨年の作品もこの地に残してあり、この風土に寄り添った経年劣化を期待しています。」(林靖高)
バルーンの中は、大人も子供も遊べる構造だ。
「シンプルに楽しいと思います。作品の内部に入ったら、大人も何も考えずに素直に遊べるので、海もキレイでアクティビティの盛んな沖縄でやるアートフェスティバルとの相性も良いかと思います。」(岡田将孝)
見ているだけではわからない。遊んで体験することで、この場所とも作品ともつながれる、そんな作品なのだ。