作品紛失等で揺れる「アーツ前橋」問題、元館長が教授を務める東京藝大は「基本的に当事者間で解決すべき」。回答に対する識者コメントも紹介
(質問1)
住友教授は本年4月から教壇に復帰しました。職掌に関わる能力や倫理観に疑義が持たれている同氏に対し、貴大が処分を行わなかった理由をお教えください。また、貴大が住友教授に聞き取りを行った回数と延べ時間、どのような形式で実施されたかをお教えください。
(回答1)
アーツ前橋で発生した作品紛失及びその後の対応等の詳細については、報道や「アーツ前橋作品紛失調査委員会」の報告書等により知りました。本学は直接的な当事者ではないため事実関係の詳細を知り得る立場になく、公開された報告書及び作品紛失の当事者である前橋市が詳細を調べた上で住友教授に訓告処分を行ったこと等を鑑み、法令、本学就業規則、職員懲戒処分規則等に照らし、検討し、判断しました。また、今後、職務外の行為において新たな事実があった等の公的な報告がなされた場合や、本学の諸規則に違反した場合等は、その事案について公正かつ中立な立場で事実関係を確認し、判断していきます。住友教授に対する聞き取りについて、昨年度は体調不良のため叶いませんでしたが、4月以降は住友教授への教員からの聞き取りは適宜行っております。
【注記】
前橋市が設置した有識者による作品紛失調査委員会が2021年3月に公表した報告書は、住友前館長(当時東京藝大准教授を兼職)が紛失隠蔽の説明を検討していたと指摘。報告書を受け、市は住友前館長ら5人を訓告処分とした。住友前館長は従前の予定通りに同年3月末に退任し、翌4月に同大教授に昇格。同年10月から本人が申し出てて学内外の活動を休止していた。
(質問2)
作品紛失を受け、熊倉教授は貴大ウェブサイトに「アーツ前橋の事案に対する当研究科の対応方針」(2021年10月11日付、以下「対応方針」)を掲載し、学内に「検証委員会」の設置を言明されました。その後、当該ページは削除され、「キュレーション教育プログラム」と冠した検討委員会が設置されました。方針を変更した理由とページ削除の理由及び責任者をお教えください。
(回答2)
ご指摘の「対応方針」は、検討委員会の報告書の中にリンクを示すことで、全体の経緯を明らかにすることに努めております。ご指摘の「対応方針」を削除したという認識はありませんが、リンクが開かなくなっていたようで、大変失礼いたしました。早速修正の対応をいたしました。 また、当初「検証委員会」と表記しておりましたが、今回の検討の主旨は、学内の専門家が集まって「この事案をどのように把握し、対処すべきか検討すること」(報告書より)であったため、「検討委員会」と称することが適切であると判断した次第です。
【注記】
学科長の熊倉教授による「対応方針」は、同大大学院国際創造研究科アートプロデュース専攻(以下GA)のホームページに掲載され、作品紛失は「我が国唯一の国立芸術総合大学として看過できない問題を多く含んでいる」として、大学でも調査を行う検証委員会を設けると記載。その後、当該ページは見えない状態になっていたが、7月10日現在、復活している。同方針を受けて発足した「キュレーション教育プログラム検討委員会」は、学内教員9人で構成され、2022年2月~11月に計5回開催。当時GA教授の長谷川祐子(現・金沢21世紀美術館館長)やアーツカウンシル前橋統括責任者の友岡邦之・高崎経済大学教授らを招いてレクチャーや意見交換を行い、行われた議論をまとめた報告書を今年3月発表した。