探幽・若冲・応挙ら。相国寺・金閣・銀閣所蔵の名品が大分県立美術館に集結
京都・相国寺は、1382年の創建以来、日本の文化を牽引してきた寺院だ。本展は、そんな相国寺と、金閣寺(鹿苑寺)や銀閣寺(慈照寺)など相国寺の塔頭(小寺院、別坊、脇寺等)が所蔵する名宝計73点を一度に鑑賞できる、貴重な機会となっている。
展示される作品には雪舟、千利休、長谷川等伯、狩野探幽、伊藤若冲、円山応挙、本阿弥光悦、野々村仁清ら、室町時代から江戸時代に活躍した巨匠の作品も数多く含まれている。
とくに注目すべきは、徳川家康の御用絵師でもあった狩野探幽(1602~1674)が、二人の弟である尚信・安信との合作で完成させた《中観音図・猿猴》だろう。画面構成に優れた作品で、中心の観音像を探幽が、右側の猿を尚信が、左側を安信が描いている。その三者三様な描線の豊かさも楽しみたい。
約20点も展示される伊藤若冲(1716~1800)の作品も必見。
代表作《動植綵絵》など色彩豊かな作品で知られる伊藤若冲だが、本展ではもうひとつの魅力である水墨画に焦点が当てられる。
筆の勢いを伝える墨線の大胆かつ力強い質感と、独自の緻密な描法「筋目描き」をもって描かれた鶏の首から胴の繊細さ。実際の作品を目の当たりにすれば、そのどちらも表現してしまう若冲が、いかに卓越した墨絵の名手だったかがわかるだろう。
さらに、江戸時代中期に活躍した画家・円山応挙(1733~1795)の代表作《牡丹孔雀図》も展示される。遠近法や中国画の影響を受けた写実的な作風の応挙が描いた、色の濃淡が絶妙な牡丹の花びらや緻密に重なった孔雀の羽は、眺めているだけで目が喜んでしまいそうだ。
加えて、戦後の京都画壇で活躍した大分県出身の日本画家・岩澤重夫(1927~2009)が手がけた金閣寺客殿障壁画も公開される。岩澤は、「今まで誰も描いた事の無いものを制作する」「三つの部屋を全く別世界にする」「堂本印象という師匠に学んだ証として再び抽象画に挑戦する」と意気込んで、構想に3年かけて制作に着手した。
岩澤の最晩年に完成した北の間には「写実の梅」、中の間には「抽象の桜」、南の間には「プラチナと薄墨の山水」という主題で障壁画が制作され、各部屋の趣向を違えながら神々しい世界が表現されているという。
複数の時代にわたって貴重な品々が集まる本展を訪れれば、日本文化が誇る「美」に通底する感覚が研ぎ澄まされるかもしれない。この機会にぜひ、足を運んでみてはいかがだろうか。