絵本作家・三浦太郎のキャリアと制作に迫る展覧会が開催。
大阪芸術大学美術学科で版画を専攻し、卒業後はイラストレーターとして活動していた三浦太郎。そんな三浦が絵本作りに関わることになるきっかけは、〈板橋区立美術館〉で観覧した『イタリア・ボローニャ国際絵本原画展』だった。2001年に自身も初入選、それがきっかけとなり2004年にスイスで絵本作家デビューする。日本においても『くっついた』や『ちいさなおうさま』などロングセラー作品を出版し、そのデザイン性と高さとアイデアあふれる展開で、世代を問わず愛されている作家だ。
絵本作家活動の端緒でもある〈板橋区立美術館〉で今回開催される『三浦太郎展 絵本とタブロー』では、原画とともにこれまでの作品の裏側を知ることができる。三浦の絵本制作の特徴としてあげられるのが、デジタルとアナログの融合だ。細かなパーツをカッターで切り再構成、色版ごとに原画を描き分けるなど、細やかで手間のかかる作業を経て生み出された作品は、グラフィカルだがどこか温かみを感じる。
加えて三浦の活動で注目したいのが、企画展のタイトルにもあるタブローだ。2014年、〈ボローニャ近代美術館〉での展示から始まったタブロー制作ではステンシルを活用。アンリ・マティスの『大きな横たわる裸婦』などヨーロッパ名画を働く人の姿でトレースし、黒一色で描かれた『ワークマンステンシル』シリーズは、絵本とはまた違った、よりデザイン性を追求した作品となっている。学生時代にシルクスクリーンを学んでいた、三浦ならではのアイデアだ。
その他、これまでには見られなかった手描きの風景が続く2022年刊行予定の絵本『みち』の原画や、『ワークマンステンシル』とは対照的に鮮やかな色と豊かな表情が印象的なタブロー『こどもアイデンティティー』なども展示。幅広くも奥深い、三浦太郎のキャリアと仕事の全貌に迫ることができる絶好の機会だ。
〈板橋区立美術館〉東京都板橋区赤塚5-34-27 TEL03 3979 3251。2022年11月19日~2023年1月9日。9時30分~17時(最終入場は閉館の30分前まで)。月曜休(1月9日は開館)。12月29日~1月3日休。一般650円、高校生・大学生450円、小・中学生200円。