「まだまだいけると感じた」壊れた明治の太鼓 3年かけて善意募り…お披露目会で感じた歴史の重み【福井発】
大太鼓の直径は約70cm。明治最後の年、明治45(1912)年に作られた。黒くくすんだ木製の胴が110年間の歴史を感じさせる。修復したのは勝山市の太鼓奏者、大久保哲朗さんだ。大久保さんによると、福井市で間もなく廃寺となる寺に、長年 壊れた状態で放置されていたという。
太鼓奏者 大久保哲朗さん:
ずっと天井に吊ってあり、寂しかったと思う。でも、実はまだまだいけるぞというのを叩いて感じたので、その思いをそのまま形にできればと思った
鼓面の革の張り替えなど修復予算は約30万円。2019年から各地のイベントに出向いて、壊れた状態の太鼓を叩き、来場者から善意を集めた。インターネットで資金を募るクラウドファンディングの形はとらなかった。人とのつながりを感じながら協力を募りたかったからだ。
しかし新型コロナウイルスの感染拡大が資金集めを難航させた。人との接触が制限され、演奏会の開催もほとんどできなくなった。2022年、なんとか目標金額を達成した。かかった期間は3年にも及んだ。
向かったのは愛知県の太鼓店。ようやく革の張り替えを依頼することができた。
修復を終えた2022年9月、協力してくれた人たちに感謝の気持ちを伝えたいと、大太鼓のお披露目会を開いた。集まった人たちは、代わる代わる太鼓を叩き、その響きと歴史の重みを全身で感じていた。
最後に大久保さんは、共に活動を続けるバンド仲間と舞台に立ち、生まれ変わった大太鼓に力強くばちをふるった。
太鼓奏者 大久保哲朗さん:
みんなに聴いてもらえて太鼓が喜んでいると思う。(今後は)色んなところで演奏もするし、実際に触ってもらったりしながら感じてもらう太鼓、人と人がつながる太鼓にしていきたいと思う。
(福井テレビ)