金沢から世界へ 新しい工芸・ラグジュアリー戦略の突破口とは
金沢から世界に「KOGEI」を発信するため、2017年から始まり、6回目。コロナ禍が完全に収束していないなかで、入場者数と売上が過去最大規模に成長している。アートコレクターが少ない日本で、新しい工芸のマーケットに必要な視点を探った。
■地域資源をつなぐアートマーケットに
会場は、金沢駅前にあるホテル「ハイアット セントリック 金沢」。全国から来場客や作家、ギャラリー関係者たちが一堂に会し、熱気に包まれていた。北陸新幹線開通後、関東方面からのアクセスがよくなり、北陸だけでなく東京からの来場者も増えてきた。売上の詳細は公表されていないが、過去最高値だったという。
客室に足を踏み入れると、壁に大きな漆作品が掲げてあったり、ベッドやサイドテーブルに陶磁器やアートオブジェが展示してある。客室ごとに異なるギャラリーが出展していて、その場で作品の制作背景を聞きながら、購入することができる。和紙と写真を融合した作品ができるまでの流れを映像にまとめて紹介する展示もあった。
「KOGEI Art Fair Kanazawa」は、もともと金沢から海外に向けて工芸マーケットを作るために生まれたアートフェアだ。九谷焼、輪島塗、山中漆器......石川県内だけでも36種類もの伝統工芸があり、金沢美術工芸大のほか、職人の養成施設などがある。そのまま地域に根ざして活動する作家もいるが、県外に出てしまう人も多いのが現状だ。作家が持続的に活動するためにも、金沢から独自の販路開拓や、アートとしての工芸の発信の機運を醸成してきた。
2020年からは関連企画として、富山、石川、福井の3県を舞台に北陸工芸の祭典「GO FOR KOGEI」も始まった。重要文化財に指定された寺社仏閣の会場のほか、北陸を旅しながら工芸の魅力に触れるプログラムが目白押しだ。他にも、秋から冬にかけて北陸では工芸にまつわるイベントや芸術祭が大小問わず多く行われており、コロナ禍を経て、地域資源をつなぐ連携を模索している。
さらにインバウンドとして、小松空港から小松駅までバスで約12分という立地を生かし、国内だけでなくアジアからの誘客を狙う。また金沢には「金沢港クルーズターミナル」があり、大型クルーズ船が寄港できるように整備されている。海外のギャラリーとの連携や、世界への発信は今後の課題だ。
副実行委員長の浦淳(認定NPO法人趣都金澤理事長)は「工芸は、素材の確保や温湿度などの環境、市場の有無などの条件下で伝承された技であり、その地の地域性と深い関係がある。工芸が盛んな北陸の地域が繋がり、工芸全体が再評価されることで、より大きなパワーが生まれる。まずは金沢が北陸のゲートウェイになれたら」と語る。