美大学生は7割女性なのに教授は8割男性 芸術分野で著しい不均衡
調査団は第1弾として2021年に「ハラスメント白書2021」を発表。今回はハラスメントの背景にあるジェンダーバランスについて調査。大学・養成所などの教育機関や、過去10年間に開催された知名度のある賞やコンクールを対象に男女比を可視化した。
美術分野では、芸術選奨などの賞(20年までの過去10年間)の審査員の71%、大賞受賞者の75%が男性。主要15美術館で開催された個展(同)でも84%が男性作家、7館の購入作品数(同)のうち80%が男性作家のものだった。美術を志す女性は多いものの、教育指導者、賞選考、個展開催、美術館の作品購入といったキャリア形成の各段階において男性優位な現状が明らかになった。
映画は他分野より傾向が顕著だった。日本アカデミー賞で、作品賞の監督▽監督賞▽脚本賞――などの受賞者(俳優賞除く)は、10年間で128人中女性はわずか7人。毎日映画コンクールの日本映画大賞を受賞したのは、全員男性監督だった。長時間労働の常態化などで女性がドロップアウトしやすい一方、キャリアを積んだ男性が大作を任せられやすいと白書は指摘する。
興味深い結果が表れたのは、オーケストラ団体。全団員の男女の割合は一見平等だが、固定給が保証される名門ほど男性比率が高く、芸術監督や常任指揮者、演奏者のリーダーはほぼ全員が男性だった。また、評論分野では、小林秀雄賞は10年間の審査員、受賞者が全員男性となるなど、偏りが突出していた。
24日にあった記者会見で、調査に協力した評論家の荻上チキさんは「(教育の現場を見れば分かるように)潜在的には女性の表現者が多いにもかかわらず、男性が男性を育て評価し、ふるい落とされた女性表現者が消費者として男性表現者を支えるといういびつな構造がある。まずは審査員の男女比率を整えてほしい」と求めた。
白書は調査団のウェブサイトhttps://www.hyogen-genba.com/で見られる。【高橋咲子】