「アウグスト1世の古伊万里」確認…佐賀県など所蔵の色絵皿2枚に「パレスナンバー」
この色絵皿は、「色絵鳥幕桜牡丹文輪繋透皿」。古伊万里に詳しい同市教委生涯学習課の船井向洋副主幹は「歴史に翻弄され、産地に戻ってきた色絵皿の運命に思いをはせてほしい」と話している。
伊万里市教委や九陶によると、桜庭美咲・武蔵野美術大非常勤講師(美術史)を中心とする共同研究で判明した。共同研究は桜庭講師が神田外語大日本研究所時代の2019年4月~23年3月、ドイツのドレスデン国立美術館を訪れるなどして行われた。九陶の大橋康二名誉顧問や藤原友子学芸課長も協力した。
アウグスト1世は欧州で初めて磁器の焼成を成功させ、「マイセン窯」を創設したことでも知られる。熱心な東洋磁器の収集家で、18世紀の目録には約2万9500点が記載されていたという。コレクションには「パレスナンバー」と呼ばれる記号が彫り込みや塗料で記されていた。
この色絵皿は18世紀初頭に有田で焼かれ、伊万里から海外に出荷された。九陶のものは直径約19センチで1981年に、伊万里・鍋島ギャラリーのものは約23センチで99年にそれぞれ骨董商から購入していた。いずれも同じパレスナンバー「N:316+」が記されており、アウグスト1世のコレクションの一つと推察されていた。
アウグスト1世の18世紀の目録には同じナンバーの13点が記されている。共同研究を通じ、桜庭講師が全国の美術館や研究施設を対象にパレスナンバーのある所蔵品についてアンケートを実施。同じナンバーでデザインの似た5点がドレスデン国立美術館に保存されていることも分かり、13点中7点がドイツと県内に存在することが確認された。
伊万里・鍋島ギャラリーはこの色絵皿を企画展「綺麗なうつわ―色鍋島と金襴手古伊万里展」で公開している。共同研究の成果を反映し、説明内容を変更。5月28日までだった会期も7月30日まで延長した。入館・観覧無料。