香川・善通寺の僧侶は本の元営業 生誕1250年に空海書籍フェアの”夢”実現
「空海さんの業績や考えを伝えるためには、本が大切だと思っていました。御誕生1250年に合わせて、小規模でも書店と『何かできたらいいな』と夢を語っていたら、偶然が重なって全国フェアが実現しました」
中嶋さんは、空海の生誕地とされる善通寺で広報を担当している。大学卒業後は、書籍流通・販売業「丸善」(当時)の営業として、図書館や書店に足を運んでいた。僧侶になって10年。善通寺市立図書館の管理運営をグループ企業の丸善雄松堂などが担っている縁で、中嶋さんは2018年にかつての先輩と善通寺で約7年ぶりに再会した。
2人はお互いの仕事について語り合った。中嶋さんは、20代の頃に深い関わりがあった書籍を通して、「多くの人に“空海”を届けたい」と書籍フェアの夢を語った。
そんな中嶋さんの思いを先輩が東京に持ち帰ると、社内でも共感された。「善通寺市の地域財産を発信するお手伝いができるなら」と、グループ企業の丸善ジュンク堂書店に企画アイデアが橋渡しされた。
中嶋さんとグループ企業側の担当者3人で、オンライン会議を開催。「一緒に何ができるだろう」という話し合いを経て、中嶋さんが空海にまつわる本の選書サポートを担うことに。空海関連書籍の全国フェアが正式に企画された。
「空海さんと聞いて、『教科書で習った』と思い出す人は多いと思います。ただ、密教を日本に伝えた宗教家の顔に限らず、文化人として多くの業績を残していることもあり、どこから空海さんを知れば良いのか、入り口が分かりにくいんです」と中嶋さん。
そこで、空海を知るにあたっての重要度を3段階に分け、34冊の書籍リストを作成。全国の丸善・ジュンク堂書店などのうち29店で、2023年2月から6月にかけてフェアを開催することになった。各書店はリストを参考に棚づくりをする。
中嶋さんと選書を担当した丸善ジュンク堂書店の喜田浩資さんは、「書店の仕事をよく知っている中嶋さんのおかげで、準備はスムーズに進みました。棚のポップを作ってくれたのも、中嶋さんです。専門的な知識を踏まえて選書できたので、助かりました」と話す。
中嶋さんにとって、全国の書店で展開されるフェアに携わるのは初の経験。売り場を作る仕事に関わることができたことも、もう一つの「夢がかなった」かたちだ。