「一作一作、自分の今を投影」 産経国際書展で高円宮賞 高頭子翠さん
「大きな賞には縁がなかったのでとてもびっくりしました。今まで続けてきたご褒美かな」
静岡県出身。小学生の時に自宅近くのお寺で書道を習い始め、中学高校でも厳しい指導のもと熱中した。結婚して上京後、30代半ばで千葉県船橋市の書家、森大朴(たいぼく)さんに出会った。思うように書けない時期もあり、筆を折ることも考えたが、森さんの言葉に支えられた。「黙々と続けたら自然と道が開けるよ、と教わりました。その言葉があったから、下手でもいいかな、と思って展覧会に出してきました」
作品作りは、題材選びが9割と考えている。新聞、雑誌、読んだ本…と常にアンテナを張り巡らし、気になる言葉をノートに書き留めている。「作品を創るときの気持ちの高まりがいちばん大事。一作一作、自分の今を投影したい」
指導者としても筆を握ってきた。門下生の主婦や定年退職後の男性たちが研鑽を積むのを静かに見守る。
書道人生で一番の理解者は夫の弘二さん(85)だ。「出かけることが多くても何も言わず、勝手にさせてくれています。作品を見せて意見を求めることもありますが、主人の意見が正しいと感じたこともありますよ」
長く書の道を歩んできたが、学びたいこと、書きたいことは尽きない。「書道は私の宝物。大げさですけれど、命がある限り続けていけたら」