国立科学博物館のクラウドファンディングが1億円の目標を達成。開始から9時間あまりで
クラウドファンディング「地球の宝を守れ|国立科学博物館500万点のコレクションを次世代へ」が、目標金額の1億円を開始9時間20分後の17時20分に達成した。
達成に際して、国立科学博物館館長の篠田謙一は次のようにコメントを発表した。「まずは、これだけ早く目標金額を達成できたことに驚いているとともに、多くの国民の皆様にご支援いただけたことに感謝しております。また、博物館が行う基礎研究に対し、多くの方から賛同を受けたことにも、大変心強く思います」。
支援金額の早期達成は喜ばしいことだが、国立の博物館が「標本・資料の収集・保管・活用」という根幹となる事業の継続への危機感から、広く支援を募集した今回の事態に対する疑問はあってしかるべきだろう。2019年の「美術手帖」の連載
「シリーズ:これからの美術館を考える」では、「指定管理者制度から探る『サヴァイヴィング・ミュージアム』への道」
として、川崎市市民ミュージアムで学芸員を務めてきたインディペンデント・キュレーター、クリティックの深川雅文が寄稿しており、次のような懸念を示している。
杞憂だと言われるかもしれないが、『リーディング・ミュージアム』的な発想が国内各地域に伝搬し、各自治体において指定管理者制度の運用とあわせて実施されるとしたら、これまで地道に守られてきたミュージアムのコレクションすら武装解除され、流動化する危険性が想像される。各地のミュージアム解体の危機がまざまざと目に浮かぶ。あれ、日本は文化国家ではなかったのか?
ミュージアムに関わる人々は、指定管理者制度に抗しきれなかった歴史を踏まえ、いまこそ、ミュージアムを愛する人々とともに、この流れに抗して声を上げる時ではないだろうか。『リーディング・ミュージアム』の道ではなく、この苦難の時代を生き抜く『サヴァイヴィング・ミュージアム』への道がいま、まさに拓かれなければらない
──「指定管理者制度から探る『サヴァイヴィング・ミュージアム』への道」より、深川雅文
美術館の自立が求められた結果、苦肉の策として実施されることになったクラウドファンディング。「指定管理者制度に抗しきれなかった」ことが地方の館のコレクションに与えた影響を振り返りつつ、今回の国立科学博物館の事例が、深川の言う「サヴァイヴィング・ミュージアム」として本当にあるべき姿なのか、多方面からの意見や視点を募り議論することが必要ではないだろうか。