桜井信一の攻める中学受験 うちの子、まあまあ賢いかも…親の期待阻む「普通の子」のボリュームゾーン
娘と闘った中学受験の記録が産経新聞出版さんの目に留まり、2014年に『下剋上受験』を出版、さらに2017年にはTBSの金曜ドラマになりました。
どうしてそこまで話題になったかというと、四谷大塚の全国模試で偏差値40ほどだった娘が、全国最難関といわれる桜蔭学園を狙って猛勉強したからです。その結果は想像がつきますよね? そうです。もちろん不合格。世の中そんなに甘くありません。ところが、最難関中学と呼ばれる中学校には忍び込みました。「がははー!世の中は甘くありませんが、中学受験界はまあまあ甘いことを私は知ってしまったのです」
中学受験人口は、首都圏だけで一学年6万人以上、その殆どが塾に通っています。しかも、新4年生から通塾するというケースが多いのです。さて、入塾するときの志望校ってどこでしょう。毎月数万円の費用がかかり、場合によっては送迎やお弁当も必要な中学受験塾の費用対効果を考えると、「まあまあ中学を目指します!」という親はいないと思います。口では遠慮がちに言っていたとしても、本音はやっぱり「難関中学受験!」、ひょっとしてうちの子はまあまあ賢いかも!と大きな期待をして通塾を始めるのです。
しかし、その夢は数ヶ月であっさり終わります。何クラスにも分かれた序列のボリュームゾーンで動けなくなるのです。ボリュームゾーンとは、150点満点のテストだとすると、90点付近。この点数をみてどう思いますか。意外にとれていると思いますか。実は、まるで取れていません。親がうんざりしないように「どうぞ正解してください問題」が60点ほど存在するのです。そこからちょっと勉強すれば90点にはなる仕組みになっているのです。
逆に上位クラスに在籍する子は何点くらいとるかというと、「120点」とれば結構優秀なのです。いや、かなり優秀。90点から120点まであと30点。4問か5問、ここを丸にすれば届くね、という期待を持った反省会が延々と続きます。中学受験界は絶対に諦めさせない微妙な立ち位置を保てるようにできているのです。つまり、みんなと同じ行動をとるとほぼ埋もれてしまいます。ごぼう抜きができるはずもないのに、「ここまできたら本人に任せるしかない」という合言葉で月謝と送迎とお弁当を続け、入塾したときには考えもしなかった中学校に進学することになります。しかし、全然残念ではないのです。難関校だけがいい学校ではなく、中堅校のなかには本当に素晴らしい学校も実在します。ただ、それは入学してから気付くことですから、頑張っているときには検討もしていないことなのです。
ここまで読んでどう感じましたか。「そんなことはない、うちの子は…」と思いましたか。それとも、実は良い学校もある中堅校を狙いますか。つまり、攻めますか?攻めませんか?やっぱり攻めますよね。私もそうでした。親のエゴと言われようともやっぱり子どもを高い舞台にあげてやりたい。そこから見える景色でその後を考えさせてやりたい。頼りない子だから、そこまでは親の介助が必要だと考え、攻めることにしたのです。そんな攻めの話、今回はこの辺で。
著者紹介
桜井信一(さくらい・しんいち) 昭和43年生まれ。中卒の両親のもとで育ち、自らも中卒になる。進学塾では娘の下剋上は難しいと判断、一念発起して小5の勉強からやり直し、娘のために「親塾」を決意。最難関中学を二人三脚で目指した結果、自身も劇的に算数や国語ができるようになる。現在は中学受験ブログ「父娘の記念受験」を主宰、有料オンライン講義「下剋上受験塾」を配信中。著書に、テレビドラマ化されたベストセラー『下剋上受験』をはじめ、『桜井さん、うちの子受かりますか』、馬淵教室と共著の『下剋上算数』『下剋上算数難関編』などがある。