移り住んだ沖縄で感じた「水」と「魂」の循環 写真家・野村恵子が撮った「輪廻転生」〈dot.〉
野村さんが4年ぶりの新作となる「Moon on the Water」を発表する。
前作「Otari-Pristine Peaks 山霊の庭」(2018年)では長野県北部の豪雪地帯、小谷村を訪れ、ほぼ自給自足の暮らしをする人々に密着した。
一転して今回は沖縄が舞台。強い日差しに湧き上がる雲、美しいサンゴ礁、海面をジャンプするクジラ、水揚げされた色とりどりの魚――それは、野村さんが日常、目にする光景という。
「住んでいる場所のすぐ目の前が海なんです。サンゴを写したのもこのへんで、ウミガメもいます。いまの時期はクジラがふつうに見える。近くには漁港もあって、新鮮な魚が安く手に入る。空揚げにするとおいしいですよ」
野村さんが東京から沖縄県中部の読谷村に移住したのは20年11月。
「私はかなり料理をするんですけれど、これまでスーパーマーケットで肉や魚を買ってきても、『生』をいただいているっていう感覚があまりしなかった。それで自然と寄り添うような暮らしがある小谷村に通い、前作を撮影したんです。実はそのころから沖縄移住を考え始めた」
「一度、都市を離れよう」と移り住んだ読谷村は那覇から車で1時間ほど。サトウキビ畑の向こうに海が広がるローカルなエリアという。「写真を見ても分かるように、自然がすごく近くなっちゃって」。
海辺だけでなく、亜熱帯のうっそうとした森の写真もある。
「沖縄県北部の『やんばる』の森です。母方の祖父母がやんばる出身なんです。そこに自分のルーツがある」
■「作風ってあまり変わらない」
野村さんは1996年、ベトナムを写した作品「越南花眼」でデビュー。その後、沖縄をライフワークの1つとして作品を撮り続けてきた。
今回の作品について、「1周して、また戻ってきた感じ」と、野村さんは言う。
「正直、作風ってあまり変わらないんだな、と思うくらい、前の流れに戻りましたね。結局、そうなっちゃうんですよ(笑)」
野村さんが本格的に沖縄を撮り始めたのは99年に発表した「Deep South」から。
最初のベトナムの作品はスナップ写真でまとめたものだったが、「『Deep South』からは風景とポートレートを組み合わせて、わりと私的なイメージから街の空気感をつむぎ出すやり方で作品をつくるようになりました」。