2022年GWに読んでおきたい「ニッポンの書棚」お薦めの10冊
コロナ渦にウクライナ侵攻と、これまで経験したことのない事態に遭遇しているからこそ、時間のあるときに読書で思索を深めておきたい。本サイト「ニッポンの書棚」では、毎月、多くの書評をお届けしている。ここに紹介する10冊は評者お薦めの作品ばかりだ。激動の時代を乗り切るヒントが見つかるかもしれない。
●核戦争の破滅は、たった一人の指導者の判断に委ねられている
プーチン大統領が核兵器の使用に言及したことで、にわかに核戦争の危機がクローズアップされている。著者のウィリアム・ペリーは、クリントン政権で国防長官を務めるなど、政権内で核使用の危険性を間近に経験してきた人物だ。本書は、キューバ危機など紙一重だった過去の事例を振り返りつつ、核戦争が起こる最悪のシナリオをいくつも提示する。サイバー攻撃による核攻撃の警報システムの脆弱性を明らかにし、誤爆のリスクが高まっている。恐ろしいのは、たった一人の指導者が、誤った判断で「核のボタン」に手をかけることで世界が滅びてしまうことだ。
●プーチン大統領の暴挙を予見した警告の書
3月24日、米国初の女性国務長官を務めたオルブライト氏が逝去した(享年84)。本書は、旧チェコスロバキアで生まれ、ナチスの脅威から逃れるために2度、亡命した体験を持つ彼女が、ファシズムとは何か、そのファシズムが1世紀ぶりに再来しかねないと警鐘を鳴らした警告の書である。彼女は「アメリカの影響力の低下が一因となり、世界の自由、繁栄、平和に対するファシズムとファシスト的政策の脅威が、第二次世界大戦が終わって以降、類を見ないほど深刻化している」との強い危機感をもっていた。本書で彼女はプーチン大統領の資質について言及しているが、まさに今日を予見させるものである。
●フェイクニュースにだまされないために
偽情報が、「プーチンの戦争」でクローズアップされている。インターネット上には膨大な情報が飛び交っているが、個人が消化できる量を超えており、その真偽を見分けるのは難しい。虚偽の情報にだまされないため、必要なのが読み解く力、「メディアリテラシー」だ。本書は30人以上の学者、ジャーナリスト、教育関係者らが寄稿、インタビュー、座談に応じたもので、フェイクニュースを見極める心構えや実践例を多角的に紹介している。あふれる情報に溺れる時代だからこそ、立ち止まって考える「吟味思考」が求められる。メディアリテラシーを高める上で、本書は格好の手引きとなるだろう。