「里山」とは何かを「水の匂い」から探る。滋賀県立美術館で「今森光彦 里山 水の匂いのするところ」が開催
水の匂いのするところ」が開催される。会期は7月8日~9月18日。
今森は1954年滋賀県大津市生まれ。第20回木村伊兵衛写真賞、第28回土門拳賞(「拳」の字は正しくは旧字体)、地域文化功労者文部科学大臣表彰mなどを受賞。学生時代より世界各国を訪問し、熱帯雨林から砂漠まで、その自然に生きる生物とそれらを取り巻く環境を撮影してきた。1992年、写真雑誌『マザー・ネイチャーズ』夏号に「里山物語」を発表。以後、滋賀・仰木地区の琵琶湖を望む田園風景の中にアトリエを構え、自然と人の関わりを「里山」という概念を通して撮影し続けてきた。
本展では、今森が長年撮り続けてきた滋賀の里山のなかでも、水の循環に着目。撮影のなかで出会った水の匂いに自身の原風景を思い出したという今森が写し取った、里山における水の循環/生命の循環が展示される。
展覧会は6章構成。第1章「はじまりの場所」は、水源地でもある原生の森の地表からにじみでる水、沢、渓流などを被写体に、産卵のために渓流を遡上するビワマス、渓谷の落ち葉の中に佇むカモシカの骨、お盆の時期に先祖を供養するためにおこなわれる「おしょらいさん」など、水と土の匂いのなかの循環をとらえる。
第2章「萌木の国」では、滋賀県マキノ町(現・高島市)の雑木林を入手した今森が、四季の風景やそこで生きる生き物の写真を紹介。第3章「光の田園」では、今森が幼い頃より憧れていた東南アジアの熱帯雨林を旅したことで着目するようになった、棚田とそこに生きる生物に焦点を当てる。
第4章「湖辺の暮らし」では琵琶湖とその周辺の暮らしを、第5章「くゆるヨシ原」は近江八幡の水郷のヨシ原とヨシ焼きをはじめとする人の営みを、それぞれ今森の写真を通して紹介する。そして最後となる第6章「還るところ」では、今森がとらえ続けてきた琵琶湖の湖西に表れている、生命の循環を展観する。
現在、広く使われ、耳にする言葉となった「里山」。この言葉を実質的に広めることとなった今森の思想そのものを、作品とともに紹介する展覧会となりそうだ。