「運がよくて受賞できたと思う」第168回芥川賞の佐藤厚志さん会見(全文)
司会:では佐藤さん、まず現在のお気持ち、第一声をお願いいたします。
佐藤:誠にありがとうございます。まず自分としては候補に挙げていただいたときに、すごくうれしくて、半分くらいは、なんて言うか、達成感がありまして。今日は、なんて言うか本当に、まぐれっていうか、なかなか小説っていうのは、比べてどっちがいいというふうには、1人1人、読んだときの感触も違うので、比べられるものではないとは分かっていて。なので、本当に運がよくて今回受賞できたんだというふうに思ってます。
司会:ありがとうございます。それでは佐藤厚志さんにご質問のある方は挙手をお願いいたします。では、後ろの女性の、あなたです。
記者:河北新報の阿曽です。3つ伺います。今日の選考結果は、どんな状況で、どんな心境で待たれていたのでしょうか。今おっしゃったように候補に選ばれてた段階ですでに満足だ、安心したというふうにおっしゃっていたんですけれども、あらためて実際に賞に選ばれたお気持ちをお聞かせください。
佐藤:まず待っていたのは本屋、僕、本屋に勤めてますので、その書店の近くの、東京駅近くの店舗で待ってまして、緊張して待っていたという感じです。あとは、なんでしたっけ。
記者:あらためて賞に決まった心境です。
佐藤:心境は、そうですね、これも、なんかノミネートのときと同じで、安心したなという感じで、仙台、地元がすごく盛り上がってて、すごい騒いでいただいてたんで、なんて言うか、この期待に応えられるかっていうのが結構プレッシャーで、本当に良かったなっていうか、みんな喜んでんじゃないかなっていうふうに思ってますけどね。
記者:ありがとうございます。受賞作は東日本大震災が題材になっていて、それだけに、ちょっとおめでとうございますとも言いづらいところはあるんですけれども、実際、佐藤さんが仙台で震災を経験されていて、あと、この震災をどう表現するかっていうのをずっと考えてきたと伺ってますし、実際、作品に書かれました。実際、書店の現場に行って、震災を扱った小説、なかなか手に取られづらいんじゃないかというのを自覚なさってるんですが、あえてこの作品書かれましたし、先ほどの選考の講評の中で、震災と真っすぐ向き合ってリアリズムの手法で、直球で書き切った点が評価されたというお話ありました。この作品で賞に選ばれたということを伺いたいと思います、お気持ちを。
佐藤:自分としてはまず、東日本大震災をもちろん受けて、今の時点から振り返ったときに見える風景というのを書いたんですけども、基本的には一生活者の日常をリアルに、なんて言うか、表現できればいいなという思いがまずあって、そこで見える風景として東日本大震災、災厄っていうふうに表現されてますが、そういうものが風景として目の前にあるという、そういうものを作品に取り入れて書いてったっていう感じです。