横尾忠則の完全新作「寒山拾得」シリーズ101点が集結。「横尾忠則 寒山百得」展が東京国立博物館で開催へ
(1936~)。その畢生の大シリーズ「寒山拾得」全101点を一挙に公開する展覧会「横尾忠則 寒山百得」展が東京国立博物館
表慶館で開催される。会期は9月12日~12月3日。
テーマの「寒山拾得」は、中国・唐の時代に生きたふたりの伝説の風狂僧、寒山・拾得を指す。本展では、日本や中国においても伝統的な画題でもある寒山拾得を横尾が独自に解釈。その造形を再構築することで、絵画史の最先端を示すような新たな寒山拾得像を提示するというものだ。コロナ禍の3年間に生み出されたそのシリーズは101点にもおよび、作品からは精神世界を縦横無尽に駆け巡るような、時空を超えた物語が紡ぎ出されているという。
会場では、101点の作品が描かれた日付順に展示される。同シリーズの初期作品《2021-09-21_2》を見ると、寒山拾得図でおなじみの微笑みは受け継がれているものの、巻物がトイレットペーパーに変化しているなど、所々に現代的なモチーフが使用されている。
また、前後の作品の関連性にも注目したい。《2022-04-27》で描かれたマントが《2022-05-01》ではござとして敷かれているといった、同じかたちの連鎖やシークエンスにも見どころが散りばめられていると言えるだろう。
本展の開催に際し、横尾は報道発表会で次のように展示の経緯を語った。「寒山拾得は以前から興味の対象であり、ちょうど描き始めた頃に本展の依頼を受けた。テーマに『拾(十)』の数字が入っているが、そのままではつまらないので『百』にしようと提案したものの、86歳で100点ものシリーズを描くという負荷を自分で自分にかけることになってしまった(笑)。そのため、目的も大義名分も捨て、まるでアスリートのような勢いで挑戦をした。自分の様式を捨てて、寒山拾得のように多様性を持たなくてはと考えた。(自身も自由に描いたので)鑑賞者も自由に見て何かを感じてもらえればいい。寒山拾得シリーズは飽きたので今後は描かないだろう(笑)」。
また、同館学芸研究部調査研究課長の松島雅人は横尾の「寒山拾得」シリーズが東京国立博物館に一堂に会することに対し、次のように期待を述べた。「本展は、40年以上造形活動に携わってきた横尾の集大成となる作品展覧会。その常識にとらわれることのない自由な発想から、肩の力を抜き、絵そのものを楽しんで鑑賞いただける内容となっている。見終わったあと体がポカポカするような本展は、若い人にもたくさん見ていただけると嬉しい」。
なお、本展と関連した特集「東京国立博物館の寒山拾得図―伝説の風狂僧への憧れ―」(9月12日~11月5日)も本館特別1室で開催される。こちらとあわせて鑑賞することで、横尾作品をより一層楽しむことができるだろう。