東京の下町で育った作家が切り出す北九州市の魅力…白と黒で描くレトロな街並み
小菅さんは東京の下町で生まれ育った。米国のカレッジの写真学科で学ぶうち、切り絵を知り、「日本的な芸術で面白い」と夢中になった。市販のカッターナイフで黒い紙を切り、武者の顔を表現すると、クラスメートたちがTシャツに印刷してプレゼントしてくれた。
帰国後は関東地方で切り絵の勉強を続け、2002年、先輩作家がいる水巻町に移住。独自の工夫を加え、04年には活動拠点を北九州市に移した。自転車や列車で市内各地を巡り、街中や路地裏などを歩いて気に入った光景に出会うと写真に収めた。
制作では、まず墨で下絵を描く。写真をそのまま絵にするのではなく、白と黒のバランスを考えており、「黒い部分が多いと奥行きや重々しい感じも出せる」と語る。黒い紙に下絵を貼り、上からペン型カッターナイフで切っていき、完成には10日前後かかるという。
北九州市移住後は、切り絵教室での指導などが軌道に乗り、商品パッケージデザインの注文も入るようになった。10年には、米国ロサンゼルスで個展も開催。額から出した繊細な切り絵が全部つながっていることを説明すると、「マジックのようだ」と感嘆の声が上がった。
「北九州には東京の下町のような懐かしい場所も多い。すてきな場所を切り絵で表現していきたい」と、作品集へ込めた思いを語る。小倉南区のカルスト台地・平尾台、門司区の路地に並ぶ飲食店、若戸大橋を見上げた作品など、これまでに制作した50点にそれぞれエッセーを付け、年内の出版を目指している。
小菅さんは「切り絵に彩色する作家が増えたが、白黒のコントラストにこだわりたい。旧長崎街道の宿場も作品にしたい」と意気込んでいる。