デザイン書画で伝える“平和への思い” 戦争直後に作られた金箔に…海外にも広がる活躍の場【広島発】
アーティスト・濱崎寿賀子さん:
コーラルハイビスカスと言って、沖縄にある花なんですけれども、沖縄は日本に帰ってきて50年目を迎えますので、今年は沖縄のものばかり講座で書かせてもらっています
廿日市市在住のアーティスト・濱崎寿賀子さん。二十四節季など季節の言葉や絵を独特のデザインで描きだす。
名付けて「壽ぎ(ことほぎ)の書」
伝統とモダンが融合したデザイン書道だ。
濱崎さんの原点は、生まれ育った山口県の周防大島。
濱崎寿賀子さん:
とても自然豊かな所で育ったんです。日本の四季の中には、いろいろな行事があって、それが旧暦とともに行われていました。その1年の日々が、ただの数字の羅列ではなくて、もっと皆さんに豊かさを伝えられるのではないかと思って、喜びが伝わりますようにという意味で壽ぎの書にさせていただいているんです
広告代理店でグラフィックデザイナーとして働いていた濱崎さん。様々な広告の制作に携わってきた。結婚後は主婦業の傍ら、お花やテーブルコーディネートを自宅で教えていた。その時、描いていた書を教えてほしいと言われたのが始まりだったという。
濱崎寿賀子さん:
あっという間に全国からいろんな方が、北海道からとか九州からとかって、わざわざここに皆さんがいらっしゃるようになり始めたんですね
拠点を東京にも作り、のべ1万人にそのアートを伝えてきたが、新型コロナウイルスの感染拡大で転機を迎える。
濱崎寿賀子さん:
私が本当にお伝えしたいことは、皆さんに直接会ってということだったが、それができなくなったのであれば、もっと違う形があるんじゃないかなと思ったわけなんですね
そんな時、材料を仕入れている会社で巡り合ったのが…
濱崎寿賀子さん:
やはりコロナで倉庫とか、いろいろなものを整理していたら、原爆投下後の戦争直後に作られた、まさに70年前ぐらいの金箔がたくさん出てきたわけなんですね
濱崎寿賀子さん:
戦後これを使って、少しでも広島復興のためにと、戦後大変な時に皆さん一生懸命、今の日本をつくるために頑張っていたのが伝わってきますよね。平和を少しでもお伝えしたいなと思って、始めていったわけなんですね
広島市西区の金彩装飾メーカー「歴清社」は、原爆投下で一時は壊滅状態に。
しかし、職人は戦後、原爆の惨禍の中、復興を目指し製作に励んだ。その当時作っていたものが、70年の時を超えて見つかった。
濱崎さんは、一枚一枚違うものを組み合わせて作品を生み出していった。
ローマ字で平和を願って描くのは、仏教の経典「般若心経」
濱崎寿賀子さん:
すべて悪いものが退散すると言われているので、コロナになって皆さんの病気が治りますようにと、ずっとそれを書いている
平和な暮らしを願った作品は、2021年末にはパリのルーブル美術館で、そして2022年3月は中東ドバイと海外の展示会へ参加。広島から世界へ活躍の場を広げている。
濱崎寿賀子さん:
平和を願って作品を作らせていただいていることを、拍手をもって迎えてくださることに私は胸がふるえまして、皆さん願っていることは一つなんだと思ったんですね。今後もこの古い箔を使って、皆さんにお伝えできればなと思っています
広島から世界へ。きょうも金箔と筆を手に、平和への想いを作品に託し続ける。
(テレビ新広島)